教員いじめは連帯責任なので、みんなボーナスはカットで――。神戸市立東須磨小学校の男性教諭(25)が同僚教諭4人からいじめや暴行を受けていた問題で、また物議を醸す動きがあった。各社報道によると、同市議会は市立小中高の校長や事務長、市教育委員会事務局の課長級職員計320人の冬のボーナスの増額を見送る条例改正案を賛成多数で可決したのだ。
4日付の毎日新聞によると、「議会では一部の議員から『対象者の範囲が広いのではないか』などの異論が出たが、市側は『市教委全体のガバナンスの欠如が問題の要因で、市民の理解が得られない』などと説明していた」という。
「組体操的な負の一体感」
今回の不祥事に関する禊だとしても、明らかに焦点がずれているように見えるこの市議会の決定に、Twitter上では著名人からも疑問の声が噴出している。
俳優・コラムニストの松尾貴史氏は次のように指摘する。
「当事者を厳罰に処すべきでは。いじめ自体の再発より、それが『世間に知れる事』を再発させないよう、さらに隠蔽体質が強くなるのではないか」(原文ママ、以下同)
芥川賞作家の平野啓一郎氏はこの動きを端的に表現した。
「まさに、組体操的な負の一体感だな」
神戸市教委総務課は今回の措置に関して次のように話す。
「今回の増額見送りはまさに東須磨小の件を受けたものです。連帯責任ということです。調査委員会の結果もまた出ていません。この状況下で、市教委の幹部職員の賞与を増額することは市民の皆様のご理解を得ることはできないと判断いたしました」
ズレている神戸市教委
市教委ではこれまで、実効性が不明確な施策の数々が実行に移されてきた。例えば、以下の通りだ。
・児童たちのメンタルに配慮してカレー給食を禁止する
・休職中の加害教員に給与が出ているのはよろしくないので条例を改正し、教諭らを『分限休職処分』に。ところが、給与を差し止められた加害教員1人が市に不服申し立て
同市内の教員は今回の市議会の決定の背景を次のように語る。
「東須磨小の事件以降、教育現場全体がおかしなテンションになっています。神戸市教育界にはいくつかの大きな教員グループがあり、今回の一件の処罰をどうするのかをめぐり、各グループ間での緊張も高まっているようです。
こうした状況下で、東須磨小や組体操の件などに関して特定の学校やグループの幹部教員だけを罰すれば、収拾がつかなくなる雰囲気があったようです。校長たちの話し合いでは『みんな教師なんだから、誰が悪いとか犯人捜しはやめよう。悪いのは暴力やいじめであって、その人自身がいけないわけではない。みんなで責任をとろう』ということで、全員で痛み分けにすることになったそうです」
崩れたらみんなの責任。誰が悪いわけでもない。確かにこれは組体操だ。事件をめぐる奇奇怪怪な対応は当面、続きそうだ。