裁判でマンション開発会社、明和地所に負けて賠償金を支払った東京都国立市が、上原公子・元市長に対し同額を個人で負担するよう求めた訴訟で、東京高裁(小林昭彦裁判長)は12月22日、市の主張をほぼ全面的に認め、上原氏に3123万9726円を市へ支払うよう命じる判決を言い渡した。
判決は、市が明和地所に賠償金を支払った2008年時点から年5%の遅延損害金(利息)も認めており、市によると現段階での総額は4300万円を超えるという。
首長が在職中に取った施策について、個人的な賠償責任を負うかどうかが争われた。一審・東京地裁(14年9月)は市の請求を棄却する「上原氏勝訴」の判決を出しており、一、二審で司法判断が真っ二つに割れた。上原氏は最高裁に上告した。
上原氏は、1999年から2期8年間、国立市長を務めた。景観保護行政や住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)からの離脱などで知られる。
裁判の発端になったのは、JR国立駅前から南に伸びる大学通り沿いに99年、明和地所による高さ44メートル(14階建て)のマンション建設計画が浮上したことだった。地元には以前から、同地区の建物は沿道の街路樹を超えないという暗黙の申し合わせがあり、建設反対運動が起きた。市は景観を守るために、市議会の議決を経て、一帯の建物の高さを20メートル以下に制限する条例を制定して建設に対抗した。
マンションは完成したが、明和地所はこうした施策で損害を受けたとして市を提訴する。その結果、市長の上原氏に営業妨害と信用毀損に当たる行為があったと認めて、市に2500万円の賠償を命じる判決が確定。利息を含めて市が明和地所に支払ったのが、上原氏が請求されている約3124万円だった。
覆された一審判決
今回の裁判では、市の行政運営が住民の要望に則った取り組みだったのか、それとも上原氏の主導による営業妨害だったのかが改めて問われた。
上原氏と弁護団は、高さ制限を盛り込んだ条例の素案をつくったのは地元住民たちで、さらに自ら5日間で地権者の82%の同意を集めて市に制定を要請した経緯を立証し、それを受けた上原氏の施策が「適法的な住民自治の営み」だったと強調。「市民の意思や行動に依拠した行政運営だったならば、むしろ首長として当然の責務であり、少なくとも個人として賠償責任を負うことはあり得ない」との論理を展開した。