今や一億総ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)時代。著名人に限らず個人ブログが普及し、さらにはTwitterやFacebook、Instagramなど各種SNSで誰もが自身の情報を世界中に発信できるようになって久しい。そんなインターネット時代になり、耳にすることが増えたのが“ネット炎上”という言葉だ。
特に芸能人など著名な人物のブログやSNSでは、バッシングのみならず、時には本人や家族に対しての殺害予告が書き込まれるといったニュースが流れることも珍しくない。
元モーニング娘。の辻希美を筆頭に、新山千春、紗栄子といった芸能人たちは炎上の常連ともいえる面々だが、数多くの誹謗中傷にさらされながらも、なぜブログを閉鎖することなく、更新し続けているのだろうか。
『ウェブはバカと暇人のもの――現場からのネット敗北宣言』(光文社)、『ネットのバカ』(新潮新書)などインターネット関連の著書を多く持ち、芸能人のブログ事情に造詣が深いネットニュース編集者・中川淳一郎氏に話を聞いた。
リンクの広告収入と1PV=0.1円の報酬
「ズバリ言ってしまえば、芸能人が炎上してもブログなどを辞めない一番の理由は“仕事だから”でしょう。芸能人のブログを見ると、トップバナーのすぐ下や文面の横側などにファンクラブや関連商品の通販ページといった広告のリンクが複数張ってあることが多いですよね。当然、そのブログから誘導されて商品を購入する人がいれば、バックマージンが発生し、その芸能人のアフィリエイト収入になります。それに自分の商品を売るのだから、懐に自分のカネが入る。また、単純にネットの場合、1PV(ページビュー)当たり0.1円前後、広告収入があるというのも通説になっています」(中川氏)
広告収入とアクセス数が主な収入源となるブログ業界では、要するに純粋な人気であろうが炎上だろうが、ブログに人(閲覧者)さえ呼べれば確実にお金が舞い込んでくるようだ。
「ブログで火種となる発言をすることでバッシングする人が現れ、話題となって『何か揉めているのかな?』と興味本位で見に来る訪問者も増え、訪問者が増えればおのずとバッシングする人も増えるわけです。また、仮に5万人がブログを訪問し、その大半がアンチだったとしても、100人ぐらいはブログの内容を見て『この人がんばっているね』と思ってファンになってくれるかもしれません。確率的にいえばたった0.2%ですが、そうやって少しずつでもファンを地道に増やし、根気強くブログを続けていけば結果的に数多くのファンを獲得できるわけです。また、批判しに来たアンチであろうと、その中の0.5%ぐらいは広告をクリックしてくれるかもしれない。炎上で5万人が訪れて、そのうち250人は自身の収入につながるアクションを起こしてくれるわけですから、オイシイですよね。あとはアクセスが多いブログであれば、単純に編集タイアップの有力先になれるので、『このサプリメント試しみて! URLはこちら』などと書いておけば大金が稼げます。これ1回で100万円もらえるようなこともあります」(同)