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マイナス金利、景気が崖から突き落とされるように悪化の危険も…窮地のアベノミクス

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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マイナス金利、景気が崖から突き落とされるように悪化の危険も…窮地のアベノミクスの画像1「Thinkstock」より

 1月29日、日本銀行は大方の予想に反して追加緩和措置としてマイナス金利の導入を発表した。同時に、日銀は物価目標(2%)の達成時期を2017年度前半頃に先送りした。

 日本経済は、アベノミクスの最も重要な柱である日銀の「量的・質的金融緩和」による円安、金利低下、株価上昇に支えられてきた。それが企業業績の回復や賃上げの環境を整備した点は大きい。しかし最近、円安・株高に変化が目立ち始め、日銀の物価目標を達成することが怪しくなり始めていた。日銀は、そうした状況になんとか歯止めをかける必要があった。そのため今回、黒田東彦総裁が否定的な見方を示してきたマイナス金利の実施にまで追い込まれた。

 ただ、過度な金融政策への依存には注意が必要だ。金融政策には一時的に金融市場などを支える効果は期待できるが、本当の意味で実体経済を改善し続けることは難しい。そして緩和がいきすぎると、バブルの発生など景気に対するマイナス面も無視できない。政府は経済政策の原点に立ち返り、規制緩和や社会保障制度などの構造改革の推進に注力すべきだ。

マイナス金利の導入は一種の劇薬

 
 マイナス金利(マイナス金利付き量的・質的金融緩和)の導入は、市場参加者にとってまさに予想外の寝耳に水ともいえる決定だった。なぜなら、日銀の黒田総裁は幾度となく、マイナス金利政策に対して否定的な見解を示してきたからだ。特に1月21日の参議院決算委員会の場で、黒田総裁は「現時点でマイナス金利を具体的に考えているということはない」と明確に述べていた。
 
 それにもかかわらず、黒田総裁はマイナス金利の導入に動いた。ある意味では、金融市場の参加者を欺いてまで円安・株高のトレンドを続けたかったとみられる。1月21日、ECB(欧州中央銀行)は理事会でドラギ総裁が3月にも追加緩和を打ち出す可能性を示唆し、世界の金融市場は急速に反発した。この動きを受けて、日銀は対応が後手に回ったと見られるのを嫌ったとも考えられる。あるいは、黒田総裁流のサプライズ=黒田バズーカを派手に打ちたかったのだろうか。

 いずれにしても、市場の誰もが予想しなかった、より強力な追加緩和を打ち出した。逆に言えば、日銀はそこまで追い込まれていたとも考えられる。

 すでに国債流通市場では、日銀の買い入れ策によって国債の売買があまり行われなくなっている。それだけ、国債の流動性が低下しているのであり、今後日銀が国債買い入れ額を増やすことは容易ではない。大手投資家が国債の流動性に懸念を抱き、国債の売買自体を激減させ国債市場が混乱する恐れもある。

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