「横田空域」問題
さて、丸山氏が批判されたもうひとつの発言は「51番目の州」発言だ。「日本がアメリカの51番目の州になることについて憲法上どのような問題があるのか、ないのか」と問題提起したが、こちらのほうはどんな真意があったのか、文脈からはわからない。
しかし、あえて勝手に深読みするならば、「日本は本当に独立国なのか」ということだ。たとえば、在日米軍問題だ。在日米軍問題は沖縄だけの問題ではない。首都圏の空の大部分は、いまだにアメリカ軍の管理下にあるのである。
これは「横田空域」と呼ばれており、横田基地を中心として広がっている在日米軍管理空域のことを指す。横田空域は民間機も含め、米軍の許可なしには日本の航空機が通過できない。民間航空機は飛行ルートを設定する際の障害となっており、羽田空港から西日本方面へ向かう路線の多くが横田空域を避けて飛行している。西方面から羽田空港へ向かう到着便は、横田空域を避けて千葉県上空から迂回する。横田空域のせいで、日本の航空機はわざわざ大回りをして移動をしており、ムダな時間や燃料を浪費している。
ある資料によれば、その燃料は毎年約11万klに上るという。これは、羽田発大阪行きの消費燃料約1年分に相当する量らしい。
また、政府試算では、この空域の影響で毎年140億円もの経済損失が発生しているという。さらに、羽田空港の周辺では飛行機が飛ぶ進路が限られてしまうため、一種の渋滞状態になっている。在日米軍問題は政治的・軍事的テーマであると同時に、極めてビジネス的なテーマでもあるのだ。
首都圏の空が自由に使えない国というのは、果たして本当の意味で独立国といえるのだろうか。石原慎太郎元都知事は横田基地について返還および軍民共同使用を訴えてきたが、外務省はいっさい無視し続けてきた。
こう考えてくると、日本は「51番目の州」に片足を突っ込んでいるのではないか。
(文=横山渉/ジャーナリスト)