マニフェストがわかりにくく曖昧なワケ
–2014年に、当時法務大臣だった松島みどり衆院議員のうちわ配布問題がありましたが、公職選挙法はとにかくややこしいイメージがあります。
長嶺 公選法では、有権者に物品を渡すことが禁じられているのですが、文書ならOKという決まりがあります。松島議員の場合、うちわは紙と骨組みでできており、この骨組みをどう扱うかでもめました。なお、蓮舫参院議員もうちわをつくりましたが、紙だけでつくられていたため、おとがめなしでした。
–そんなことでもめるのもバカバカしいですが……。
長嶺 わかりにくいわりに、公選法に違反すれば刑事罰になる可能性もあります。また、公選法による処罰の対象は有権者にも及びます。
総務省がホームページで公表している選挙の案内「私たちが拓く日本の未来」では、「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で選挙運動のメッセージを広めたり、電話で投票や応援を依頼したりするのはOK」とありますが、「電子メールによる選挙運動はNG」とあり、やはりわかりづらい。SNSであり、個別のメール機能もあるフェイスブックやLINEは、どういう扱いになるのでしょうか。
–投票の判断基準になるマニフェストも、非常にややこしく、何が書いてあるのかわかりにくいですよね。
長嶺 私は各党に出向いてマニフェストを入手したことがありますが、本当にわかりにくいです。企業の業績報告のように明確な数値目標を書いてしまうと、できなかったことがすぐにわかってしまう。そのため、あのようにもやっとした、歯切れの悪い書き方になってしまうのではないでしょうか。
また、マニフェストではないのですが、私は過去に「みなさんの参考になれば」と、国民審査の対象になった最高裁判所裁判官の経歴をホームページに掲載したことがあるのですが、「世論を誘導しようとしているのではないか?」という批判を受けました。
ただでさえ、わかりにくく書かれたものを単純化するのは難しく、また、単純化したところで、このような批判もあり、難しさがあります。
選挙に出るだけで最低300万円かかる!
–「選挙に出るには、お金がかかる」といいますが、どのくらいかかるものなのでしょうか?
長嶺 選挙運動の費用とは別に、衆院選の場合は、供託金として1人300万円かかります。これは世界一高いといわれており、ヨーロッパは数万円くらいです。アメリカやフランスなど、そもそも供託金制度がない国もあります。供託金は、有効投票総数の10分の1を獲得すれば戻ってきます(日本の場合)。
また、選挙権年齢が引き下げられた一方、被選挙権は衆院25歳以上、参院30歳以上のままで変わりませんでした。こちらも、他国と比較して高めです。供託金の金額と被選挙権の年齢を下げることができれば、情熱のある若者が勢いで立候補しやすくもなるでしょうね。若い候補者が出れば、「応援したい」と思う同世代の有権者も出てくるでしょう。
そのほうが、政治が変わる可能性は高いと思いますが、与党はやりたくないのでしょうね。
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