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戦国時代のカラフル衣装は史実!『麒麟がくる』が描く“意外な&細かい歴史的事実” 

文・取材=後藤拓也/A4studio
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『麒麟がくる』公式サイトより

 現在放送中のNHK大河ドラマ麒麟がくる』。出演が予定されていた女優・沢尻エリカの薬物事件による降板劇や、それにより大幅な撮り直しを迫られたことなどが大きな話題を呼んでいるが、もう一つ、出演陣の着用する鮮やかな衣裳も世間の注目を集めている。

 報道によれば、このカラフルな画づくりの賛否は分かれているようで、一部の視聴者からは「カラフルすぎて目がチカチカする」という声まで上がってしまっているという。しかしNHK・木田幸紀放送総局長は、「さまざまなご意見をいただいています」と批判の存在を認めたうえで、原色を用いた衣装については、「時代考証に基づいています」と語り、完全な創作ではないことを強調している。

 そこで今回は、日本中世史が専門の研究者で、2016年放送の大河ドラマ『真田丸』では時代考証を務めた東京都市大学共通教育部准教授・丸島和洋氏に、戦国時代は本当にカラフルだったのかということについて、詳しく話を聞いた。

戦国時代にカラフルだったのは本当だった、その理由

 まずは、戦国時代に色鮮やかな衣服が着られていたというのは本当なのか、単刀直入に疑問をぶつけてみた。

「戦国時代に服装が艶やかになったのは事実です。戦国時代から安土桃山時代にかけて、『小袖』という服が女性を中心に流行します。これはもともと、下着として着られていたものなのですが、それがカラフルになり、表に出てくるようになったのです。

 現在まで残っている当時の絵画を調べれば、戦国時代頃から衣服がカラフルになっていったことは言えると思います。そうした絵画は、時間が経って色が落ちてしまっているのですが、CGなどを使って復元してみると非常に色鮮やかだった、ということはよくあることなんですよ」(丸島氏)

 時代背景を無視して極彩色の衣装を採用したわけではなく、きちんと一定の歴史的エビデンスに則って採用していたというわけか。では戦国時代にカラフルな服装が好まれるようになっていったのは、なぜなのだろうか。

「戦国時代には、武将の兜もやたら目立つものに変わっていきましたし、当時は男性も女性も、自己主張が激しかったようです。また、服の材質として木綿が使われることが増えるなど、さまざまな時代的な変化もあって、とくに上の階級にある人、身分の高い人が着飾るようになっていったのではないでしょうか」(同)

 そこで気になるのが、批判も招くほどカラフルな大河ドラマが、今になってつくられた理由だ。丸島氏は、かつて時代考証として大河ドラマにかかわった経験から、その理由をこう推測する。

「ドラマの制作側が、どうしたら視聴者に観てもらいやすくなるかということを考えて、画づくりの方針を立てているのではないでしょうか。時代劇を初めて観るという人が増えているなかで、見慣れた俳優で、時代劇のお化粧をされてしまうと、誰が誰だかわからなくなってしまうことも多いと思います。

 また大河ドラマは、普通の時代劇と比べてとりわけ登場人物が多い。なので、これはあくまでも私の想像なのですが、NHKとしても視聴者が混乱しないための配慮をある程度入れたいはずで、煌びやかな衣服は、見た目で人物を判別しやすいように、という工夫の一つなのではないでしょうか。

 視聴者の方々のなかには、自分が10代、20代の頃に観た大河ドラマをスタンダードだと考える方もいるようです。私自身も、印象深い大河はその頃のものです。ですが例えば、現在60歳の人が20代の頃に観た大河ドラマのようなものを今つくると、現代の20代の人は付いていけないですよね。ですから時代に合わせた大河ドラマをつくるわけですが、そうすると『私の思う大河ドラマとは違う』という意見も出てきてしまうのでしょう」(同)

光秀と信長、実際はイメージと真逆の人間だった?

 戦国時代にカラフルな衣服が着られていたというのは、意外だが事実であるようだ。そこで、『麒麟がくる』の主人公・明智光秀にも、世間一般のイメージとは違う、意外な一面はないかと尋ねてみた。

「光秀の一般的なイメージは、“保守的な教養人”といったものでしょう。しかし実際には、“イケイケドンドン”な人だったようなんです。例えば、比叡山の焼き討ちの際に光秀が出した命令書を見ると、『皆殺しにしろ』といったことが当たり前のように書いてあります。また、織田信長に届けられたお寺や公家の訴えを見ると、『光秀に領地を占領されたので返してほしい』というものが結構あるのです。

 要するに、どちらかというと破天荒なイメージで、革命家というふうに言われがちな信長のほうが、比較的先例を重視するタイプだったのです。そして積極的な光秀に対して信長は、『今まで通りにしなさい』という姿勢だったわけです。ただし信長には悪い癖がありまして、人の心を読めず、自分が正しいと思っていることを相手に押し付けてしまうところがあったようです。そのため本人は親切心で言っているのに、言われたほうはイラッとしてしまう。このことが、謀反が相次ぐ原因になってしまったんでしょうね」(同)

 最後に、『麒麟がくる』というドラマにおける見どころを、歴史の専門家という立場から語っていただいた。

「すでに一度、斎藤道三が毒入りのお茶を出すシーンがありましたが、光秀自身も教養人ですし、幕府関係者や光秀が仕える織田家でも茶の湯がとても盛んなんですよ。これから登場してくる人物もみんなお茶に詳しい人ばかりですし、関係者の方からは、千利休が茶道として完成させる前のお茶を意識して丁寧に描いていると聞いています。ですから茶の湯のシーンに注目して観るのも面白いのではないでしょうか。

 また、例えば女性が座るシーンで、正座ではなくて片方の膝を立てて座っているときがあると思うのですが、あれは中世の女性の正式な座り方なんですね。どうしても衣装ばかりが目に付いてしまうところがあるかと思いますが、風俗や文化について、今回のドラマは時代考証にきっちりと基づいたうえで、今までやられてこなかったことを試みていると伺っていますので、そうした点も意識して観ていただきたいですね」(同)

「カラフル過ぎる」と批判を集めた『麒麟がくる』だが、歴史の専門家を納得させるような、見どころの多いドラマでもある様子。これから先、世間的なイメージを裏切るような“イケイケドンドン”な光秀が描かれるのかといったことを含めて、注目しつつ観ていきたいところだ。

(文・取材=後藤拓也/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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