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クリントン候補、財団に中国人の巨額寄付で疑惑浮上…中国権力闘争が米大統領選に飛び火

文=相馬勝/ジャーナリスト

中国内の権力闘争が影響

 この背景には、汚職や腐敗の摘発を強める習近平指導部の意向があるのは確実だ。一説によると、最高指導部人事が大幅に入れ替わる、来年秋の第19回中国共産党大会を1年後に控えて、党内の権力闘争が激化し、習近平主席のライバルで、遼寧省のトップを務めたことがある李克強首相の追い落としのために同省選出の全人代委員の不正が明らかにされたとの見方も出ている。

 これは、習近平主席の腹心とされる天津市の黄興国・党委書記代理が10日、突然解任されたことで、習氏が逆襲に出たともいわれている。遼寧省の全人代委員の大量資格取り消しが党中央の権力闘争に絡んでいるとすれば、資格を取り消された委員の不正追及が今後、本格化し、逮捕者が出ることも予想される。

「45人の元委員のなかでも、王の不正の額はとびぬけて大きいとみられるだけに、王の逮捕は時間の問題だろう」と北京の外交筋は指摘する。

中国の権力闘争が米大統領選に波及か

 ここで急浮上してきたのが、中国の火花が米国に飛び火する可能性だ。なぜならば、王氏は中国内ばかりでなく、米国での事業拡大のために、米国内の要所要所にカネをばらまいていた形跡がある。

 その端的な例が、王氏が米国の事業の拠点としているバージニア州のテリー・マコーリフ氏への献金だ。米CNNによると、米司法省と米連邦捜査局(FBI)が合同で今年5月、3年前の13年の米バージニア州知事選で、王氏が経営する米国内の企業からマコーリフ知事の陣営に12万ドル(約1200万円)もの選挙資金が提供されたとの疑いで捜査を開始したという。

 知事は08年の大統領選でヒラリー・クリントン氏の選対責任者を務めており、クリントン財団の幹部だったことから、クリントン夫妻にとって「もっとも近い友人」とされる。

 このため、王氏が経営する中国企業が、マコーリフ知事の紹介を受けて、クリントン財団に200万ドルを寄付していたこともCNNの報道によって判明している。米国の法律では、大統領選や知事選などの立候補者が外国人から選挙資金の提供を受けることは禁じられており、マコーリフ知事の逮捕も視野に入ってきたとの報道もある。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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