信用不安がユーロ圏全体に連鎖の危機も
また、最大の問題は、ハイブリッド証券の一種である「CoCo債」だ。ハイブリッド証券とは、債券と株式の両方の顔を持つ金融商品で、状況によって債券にも株式にもなるため、銀行の自己資本に組み込むことができる。
「偶発転換社債」とも呼ばれ、10年頃から生まれた新しい金融商品だ。銀行のコアTier1(狭義の中核的自己資本)に組み込むことができるため、資本強化が喫緊の課題であったヨーロッパの銀行は飛びついた。
CoCo債は、銀行の経営が健全なときは債券として扱われ、高い利回りが期待できる。しかし、自己資本不足に陥るなどしたときは、デット・エクイティ・スワップ(DES)による株式転換や減額が行われる。
債券とは、銀行にとっての借金であり、貸し手にとっては借用書のようなものだ。そこで、銀行が借金を返済できなくなったときに借用書の代わりに株式をわたすのがDESである。銀行にとっては借金が減って自己資本が増え、貸し手にとっては投資による金利が得られなくなるが、焦げつきの心配がなくなる上に株式の配当が期待できる。
ヨーロッパの銀行は、自己資本増強のために大量にCoCo債を発行(約1020億ドル)し、証券会社や金融機関は「安全で高利回りの商品」というふれこみで販売した。それによって、株価の下落を防ぎながら自己資本を厚くしたわけだ。
しかし、これは「ヨーロッパの銀行の経営は健全である」という前提で成り立つ、危うい構造になっていた。実際、今年2月にドイツ銀行のCoCo債の一種「AT1債」(約46億ユーロ)が、債券から株式に転換されそうになった。これは、一種の債券のデフォルトであるため、CoCo債の信用が一気に低下することになった。
そのため、これまで銀行の自己資本増強に使われてきたCoCo債の新規発行は難しい状態になっており、「増資が必要=株式の希薄化=株安」という流れが生まれている。ただ、増資も信用がなければ難しく、現実的には公的資金の注入が必要になるだろう。ただ、公的資金の注入や政府による債務保証が行われた場合、実質的に政府が債務を肩代わりすることになるため、ドイツという国自体の信用毀損にもつながりかねない。
一方、この危機を放置すれば、ドイツ銀行をメインバンクとする企業などの資金調達にもマイナスの影響を与え、ドイツひいてはユーロ圏全体の信用不安にも連鎖しかねない。そのため、本来であれば早い段階で方策を打つべきだが、ドイツ政府は救済を否定しているのが現状である。
次回は、また違った観点から、このドイツ銀行の危機を見ていきたい。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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