【沖縄「土人」発言】で露呈した大阪府警の問題体質 威嚇、罵倒、侮蔑はなぜ繰り返されるのか
米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)移設工事現場で、工事に抗議する人たちに「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」「黙れ、こら、シナ人」などと言った警察官の発言が問題となり、大阪府警の警察官2人が戒告の懲戒処分になった。
繰り返されてきた大阪府警の威嚇・暴言
沖縄には、ヘリパッド工事に伴い、全国各地の警察から機動隊などの警察官が派遣されている。沖縄・高江の森林への移設に抗議し、抵抗する反対派の動きが工事の進捗に影響を及ぼさないようにするためだ。反対派にしてみれば、他府県から派遣された警官隊は、政府が強権的に工事を進める象徴的な存在であろう。「帰れ」などの怒号が飛ぶのは、事前にわかっていたはずだ。
そういうなかで、工事に影響が出るような混乱を起こさせない、反対派に国民の共感や同情が寄せられるような事態を生じさせないことが、派遣された機動隊の最大の任務だっただろう。それにもかかわらず、反対派の言動にぶち切れて、こんな侮蔑的な言葉を発した警察官の体たらくには、警察庁幹部も頭を抱えたのではないか。
報道によれば、警視庁のほか、神奈川、福岡、千葉、愛知などの各県警の機動隊車両や警察官が確認されている。そんななか、問題発言の主が2人とも大阪府警の警察官と知って、私の中でまず浮かんだ言葉は、「やっぱり大阪府警か」であり、続いて「また大阪府警か」であった。それは、同府警が取り調べで相手を威嚇、罵倒、侮蔑する言葉を投げつけることが、これまで何度も問題になってきたからだ。
たとえば、大阪府警東警察署の30代のA警部補が、遺失物横領事件における3時間にわたる任意の取り調べで、否認した被疑者の男性に対し、「殴るぞお前、手出さへんと思ったら大間違いやぞ」「お前の人生むちゃくちゃにしたるわ」「留置場入ったらわかるんちゃう」「悪いけど、嫌がらせはするで」などと怒鳴りつけて自白を迫った事件。
あるいは関西空港署では、覚せい剤を密輸したとして逮捕され、当初は容疑を認めていたウガンダ人の男性が否認に転じると、取り調べをした40歳のB巡査部長が腹を殴る、耳を引っ張る、足を蹴るなどの暴行を加え、「お前には人権がない」などと怒鳴りつけた。
西堺署のC巡査長は、知人を殴ったとして傷害の容疑をかけられた79歳の元小学校長の男性の取り調べで、実際には嫌疑は強くないにもかかわらず、「答えろ、答えろ、あんたがそうまでしてやってないと言い切る理由は何や。答えろ。答えろ」 「考えろ。これ命令やで」とたたみかけた。そして「さっさと認めろ」など威圧的な口調で自白を迫り、さらには元教師の男性に「あんた、どうやって物事を教えてきたんや。ガキやから、適当にあしらっとったんちゃうん」などと侮辱する発言を繰り返した。ちなみに、この男性は起訴されたが、無罪となっている。
さらに、天満署で器物損壊容疑で取り調べを受けていた男性は、取り調べを担当した2人の署員から「眠たい話は聞かれへん」「お前なめてんのか、警察」「なんで反省できへんのじゃ、アホ。えー、こらあ」などの暴言を受けた。その後、男性は不起訴となった。
こうした威嚇的で、相手の人格を貶める取り調べは、虚偽の自白を招き冤罪を生み出すこともある。8月に再審無罪となった東住吉事件では、長女を火災で失った悲しみのどん底にいる母親に対し、取り調べの警察官は「助けられなかったのは殺したのと一緒や」などと責め立て、机を叩き怒号して自白を迫っている。再審の裁判所は、「当初から過度な精神的圧迫を加える取り調べが行われ、被告人は虚偽の自白をせざるを得ない状況に陥った」として、自白調書すべての任意性を否定した。
府警の体質の背後にある、検察のかばい立て
無理な取り調べが冤罪を作った例は、ほかの警察でもあるが、大阪府警の暴言の多さは際立っている。ここに挙げた事例のうち、東署、西堺署、天満署のケースは、任意の取り調べの際に被疑者がICレコーダーで録音していた。関西空港署の事件では、通訳の女性が立ち会っていた。東住吉事件では、再審請求の課程で、警察の取り調べ状況を記した報告書が開示されて、母親の訴えが裏付けられることになった。