一方、学校内に放置されてきたのは、汚泥などの放射性廃棄物だけでなく、除染された除染土壌もあった。福島原発事故がもたらした放射性物質の放出・飛散によって汚染されたのは、もちろん雨水利用施設を持つ校舎の屋上だけではない。校庭の樹木や表土も汚染された。汚染度が高くなった場所、「マイクロスポット」では、汚染された表土をはぎ取り、一定の基準内に収める努力が行われてきた。そうしたマイクロスポットでは、はぎ取った除染土壌は、ペール缶や土のうやビニール袋に入れて、学校や保育園の施設内の倉庫などや校庭・園庭などに埋め立て保管してきた。それが今日まで放置されてきたのである。
つまり、横浜市のように雨水利用施設から排出される「汚泥」、そして敷地内の汚染度の高い表土から掻き出された除染土壌などが、「一時的」にその場に保管された。しかし国や市町村がその保管場所を、ただちに処分場等に移すことを検討することはなかった。一時的(数日から1週間ほど)ならと許された学校保管が、行政自らチェックすることなく、今日まで長年にわたり、放置されてきたといえる。行政による無責任体制がもたらした、失政といえる事態である。
横浜市、ようやく動き出す
この問題に数年前から取り組んできた「学校・保育園の放射能対策 横浜の会」(樋口敦子共同代表)では、これら放射能汚染物を、廃棄物(=汚泥)、除染土壌にかかわりなく学校や保育園の施設外に運び出すように求めてきたが、神奈川新聞の報道などもきっかけとなり、保護者らの署名活動が広がり、7月8日までに4296筆の署名が横浜市に提出された。また、「週刊女性」(主婦と生活社/7月12日号)、テレビ番組『噂の!東京マガジン』(TBS系/7月31日放送)、月刊誌「紙の爆弾」(鹿砦社/9月号)でも特集され、横浜市は8月29日、横浜市の北部汚泥資源化センター(敷地面積18万5000平方メートル)内に、約100平方メートルの保管用コンクリート建屋を建設し、16年度中にその場に移管することを発表した。
これまで問題を指摘する市議会議員や保護者の声に対して横浜市は、「環境省には、移管をお願いしている」「市も独自に移管場所を検討しているが、移管先の住民の声を聞く必要があり、なかなか見つからない」「各学校では安全に管理していると聞いている」などと応じてきたが、複数のメディアに取り上げられることによって、保護者らの批判の声がさらに広がることを恐れ、行政がようやく動き出したといえる。行政の失政をチェックしたのは、市民であった。