「韓男パッチ」に続いて6月下旬に登場したのが「性病パッチ」。「性病パッチ」は名前の通り、不特定多数の男性を「性病患者」と名指しするアカウントだ。所有者の「K」(20歳)は9月上旬に書類送検された。「K」は自身が性病にかかった経験があり、その「トラウマ」から性病の男性を告発したかったと供述している。
大手メディアも戦々恐々の「男女対立」
女性卑下を繰り返す男性中心のコミュニティを狙い撃ちにしたアカウントもある。同じく9月上旬に書類送検された31歳の「L」は、6月下旬に「在基パッチ」というアカウントを開設。40人あまりの男性を差別主義的な保守系コミュニティの会員だと名指しし、買春や援助交際をしていると告発した。アカウント名の「在基」は、女性の人権保護・優遇政策に反対してきた男性活動家・成在基(ソン・ジェギ)に由来する。成在基は13年に政治パフォーマンス中の事故で死亡したが、その名前は後に韓国男性を卑下するスラングとなっている。
最新の摘発例は11月末、やはり不特定多数の男性を中傷していた23歳女性が書類送検された。これまでに摘発された7人はみな、米資本のSNSで活動すれば韓国警察に個人情報がばれないと考えていた。前述の通りリベンジポルノへの被害届は、サイトのサーバが海外にあるという理由で摘発が進まなかった経緯もある。だが、韓国警察庁サイバー安全局国際協力チームによると、今回の事件では米資本のSNSが捜査要請に応じてユーザ情報を開示。そのため短期間でアカウント所有者の身元が特定できたという。
もっともこの説明で、女性活動家らが納得する気配はなさそうだ。また男性側も反撃として、韓国女性を攻撃する「○○パッチ」を無数に開設している。11月下旬にはそのうちの1人で30歳男性が書類送検され、初の男性の摘発例となった。
大手メディアも「男女対立」をめぐる攻防と無縁ではない。たとえば「彼氏がクルマを持っていないことを女性がボヤく」というCMに、男性側から「所得格差を是認する差別表現」との非難が殺到した例がある。また女性に避妊の徹底を呼びかけた公共CMは、「妊娠は男の責任」として女性側からバッシングされた。過激化する韓国の男女対立は、ますます多方面で猛威を振るっていくことになりそうだ。
(文=高月靖/ジャーナリスト)