乱闘からついに殺人事件にまで発展
済州島の中国人問題が改めて全国的に注目されたのは、今年9月以降。同じく済州市蓮洞で、30代の男女ら中国人観光客グループ8人が乱闘事件を起こしたのが発端だ。
事件があったのは同月9日夜10時半頃。8人は焼酎やビールを飲食店に持ち込み、酒盛りを始めた。店員が注意すると、一行は注文した料理を残したまま出ていこうとした。そこで店員が料理の代金を請求したことから口論となり、路上で殴り合いに発展したわけだ。この騒ぎで店主の53歳女性が地面で後頭部を打ち、脳内出血を起こす重傷。そのほか店員や常連客ら3人も眼窩骨折などの大けがを負った。済州地方検察庁は中国人グループのうち7人を傷害などで起訴している。通行人がこの乱闘を動画に収め、SNSで公開。マスメディアも大きく報道し、韓国全土が怒りに沸いた。
ところがその怒りも冷めない同月17日、済州島で新たな事件が発生した。やはり済州市蓮洞の一角にある教会で祈祷していた61歳女性が、中国人観光客の51歳男にナイフで刺され死亡したのだ。男は犯行から半日経った同日夕方、島の反対側で逮捕された。「祈祷する女性を見たら浮気をして出ていった妻を思い出し、怒りがこみ上げて我を忘れた」と、精神疾患を疑わせる供述をしている。この凶行に韓国全土が衝撃を受けたのはもちろん、中国本土でも30を超える新聞が「ノービザ制度が廃止されかねない」との懸念とともに報道した。
【参考:主要マスコミの公式Youtubeチャンネル】
・韓国テレビ地上波キー局SBSの報道
・韓国の代表的なニュース専門チャンネル・YTNの報道
島民に広まる「チャイニーズフォビア」
そのほか中国人によるゴミ投棄、立ち小便、観光施設の損壊、ビーチでの盗撮といった軽犯罪は日常茶飯事。急速な治安の悪化に怯える島民の間では、「チャイニーズフォビア(中国人恐怖症)」という言葉も飛び交う。
当然ながら、済州島では事件があるたびに「ノービザ制度を廃止せよ」という声が上がる。だがいまひとつ盛り上がりに欠けるのは、もちろん中国人観光客がもたらす経済効果のためだ。済州島の観光収入は15年の場合で4兆7000億ウォン(4377億円)。済州島経済全体の17%を占めている。