消費者が企業活動に抱く疑問を考察するサイト ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
もっとも中国人観光客がはらむ問題は、観光業者にとってもシビアだ。中国人観光客の大半を占める団体ツアーは、中国資本の旅行会社が独占している。ツアー客は食事、ショッピング、宿泊とも、多数の中国系企業を含む指定提携業者にだけ案内される仕組みだ。韓国人経営の地元業者は、ツアー客を回してもらうために多額のリベートを払わなくてはいけない。また中国資本による宿泊施設や大型韓国料理店など観光関連事業の買収も日常茶飯事だ。
もうひとつ済州島には、外国人が土地を買い漁っているという問題もある。15年末時点で外国人が所有する土地は、済州島全体の1.1%に当たる2059万平方メートル。そのうち中国人の所有は半分に迫る914万平方メートルだ。
さらに韓国国内の済州島移住ブームもあり、島内の住宅価格は過去5年で約15%値上がりした。土地が高く売れて喜ぶ島民がいるいっぽう、住宅費にあえぐ層との格差拡大が浮き彫りになりつつある。
不安をよそに拡大する「中国人依存」
さらに悩ましいのは中国本土以外からの観光客が減っていることだ。中国人以外の外国人観光客は12年に月平均約4万9800人だったのが、今年は同4万4000人に減少。特に日本人の落ち込みが著しく、同1万5000人から4300人に急減した。そんななかで、本土の中国人が同9万人から27万2000人と、異様な勢いで突出しているわけだ(10月末)。だが中国政府はビザ要件や観光産業への規制などを通じて、目的地別に観光客数を自在に調節できる。韓国旅行人気もいつまで続くかわからず、地元は不安定なブームに右往左往するばかりだ。
中国では10月上旬、国慶節を祝って1週間の連休がある。今年の国慶節連休をはさんだ3週間の間に、中国人観光客が韓国で使った金額はカード決済分だけで4900億ウォン(455億円)。「多少の治安悪化は目をつぶれ」という極論も出るほど、中国人観光客が落とす富は魅力的だ。
だが14年に済州島を訪れた中国人観光客の平均支出額2015ドルに対して、地元資本の業者が手にするのは100ドルに満たないとの試算もある。巨大なチャイナマネーの荒波にもまれる済州島は、韓国全体の縮図なのかもしれない。
(文=高月靖/ジャーナリスト)
Business news pick up
RANKING
11:30更新関連記事
2024.10.22 06:00
2024.10.05 06:00
2024.10.04 18:50
2024.10.02 06:00