トランプ政権、方針転換でTPP復活発効も?
――中国は、トランプ大統領の発言に困惑しているようですね。
財部 トランプ大統領は、巨額な貿易赤字の原因となっている中国に揺さぶりをかけていくでしょう。中国の安い労働力によって、アメリカの雇用が失われたことは事実です。しかし、中国製品を排除してしまったら、ウォルマートの棚から商品がなくなってしまうわけで、アメリカ経済は回りません。中国は、アメリカ企業の最大の輸出先でもあります。
そのなかで「中国の好きにはさせない」と牽制することが重要だと、トランプ大統領は考えているのでしょう。ロシアとの関係改善や台湾との連携も、中国牽制のための有効なカードです。
――TPPは、経済面における中国包囲網のはずでしたが、トランプ大統領は就任初日に離脱を表明しました。
財部 離脱する代わりに、個別にFTA(自由貿易協定)を結ぶなどというのですが、あまり現実的とは思えません。私は、一度は離脱したものの、復活する可能性もあると見ています。アメリカにとって都合のいい条件に改められれば、「アメリカ・ファースト」にかないます。
昨年2月にTPP参加12カ国が協定文書に署名しましたが、発効までには2年間の猶予があるため、2018年2月までにトランプ大統領が方針を転換する可能性もあり得るのではないでしょうか。中国包囲網としては機能しますから。
――日本は、しばらくトランプ流の経済政策に左右されそうですね。
財部 日本がアメリカの景気に大きく影響を受けるのは常です。アメリカ経済が好調であれば、日本経済も悪くはなりません。トランプ氏の当選直後から始まったアメリカの金利上昇とドル高、株高は、まさにトランプ政権に対する期待相場でしたが、それも一服しました。トランプ大統領が「ドルが高すぎる」と言えばドル安・円高に振れるなど、振り回される局面が続くでしょうね。
――ありがとうございました。
後編では、トランプ政権の抱えるリスクについて、さらに財部氏の話をお伝えする。
(構成=石丸かずみ/ノンフィクションライター)