販売台数と盗難のハウツーは比例して広がる
「ガソリン代は、各国の経済状況とリンクしているとはいえず、発展途上国に住む人にとって高いものです。そのため、ハイブリッドカーのほうが都合がいいのです。そのなかでも、プリウスへの信頼度は高く、世界中でつくられている他社のハイブリッドカーより人気が高くなっています」(同)
そして、人気、信頼以外の面でも、トヨタ車が狙われる理由があるという。
「たくさん流通しているため、盗むための手段が広まってしまっているのです。最近は、ある程度のランク以上の車種にはイモビライザー(電子キーを用いた盗難防止照合システム)が搭載されていますが、それも人気のある車ほど早く解除装置が出回ってしまいます。メーカー側も、新車種を出すたびにイモビライザーを改良していますが、盗む側はすぐに対応してしまうため、“イタチごっこ”状態です。海外では、ほかのセキュリティ装置を併用したり、ハンドルやギアをロックしたり、ハンドルごと外したりして盗難対策をしています。しかし、日本でそこまでする人はほとんどいないため、窃盗団の連中に話を聞くと、すごく仕事がしやすいと言います」(同)
夏原氏いわく、イモビライザーの解除機「イモビカッター」は、中国のディーラーから出てくることが多いという。あらためてトヨタの海外需要が大きいことがわかるが、国内で流通することはないのか。
アフリカルート活性化で市場拡大の危機か
「昔から行われている方法に、まったく同じ車種の廃車と盗難車をすり替えて再登録するというものがあります。また、改造車を盗んでエンジンや高級オーディオ、足回りなど、お金をかけているパーツを業者オークションに出品しているケースもあります。買い取り業者に流れると、国外に出て行ったケースと同様に足取りをつかむことが困難です。ただし、盗難車を売るには国内流通はリスクが高く、昔に比べればそこまで大きい市場ではありません。どちらかというと、海外市場が増えている印象です。かつては、東南アジアが同じ右ハンドルということで、日本車とイギリス車の人気が高かったのですが、最近はアフリカでも裕福な人が増えてきました。その関係もあって、アフリカルートで結構大きな市場ができ始めています」(同)