中国に不満の米国内で北朝鮮攻撃の気運高まる
その中国の習近平国家主席は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と4日に会談を行い、北朝鮮のミサイル発射に対して「受け入れられない」と非難する一方で、米韓の合同軍事演習やアメリカによる韓国への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備の中止を求めるなど、対米批判も繰り出した。なぜ今、中露が結束を強めるのだろうか。
「4月に行われた米中首脳会談において、ドナルド・トランプ大統領と習主席は貿易および北朝鮮の問題について100日以内に成果を求める『100日計画』を策定している。この期限は7月中旬。しかし、中国の対北制裁は大きな進展がないため、アメリカは南シナ海をはじめとして中国に強い圧力をかけている。
仮に北朝鮮問題が片付けば、アメリカの次のターゲットは中国が領土拡張を続ける南シナ海問題となる。中国はそれをよくわかっているため、あくまで北朝鮮を盾にするかたちでアメリカとの交渉を継続したい。
また、中国は秋に5年に一度の共産党全国代表大会を控えているが、これに向けて党内の権力闘争が激化しており、現状では習主席の政敵である中国共産主義青年団が勢力を伸ばすという見方もある。そのため、中途半端な妥協もできない。そんな構図のなかで、身動きが取れなくなったといえる」(同)
確かに、ここのところアメリカは中国を牽制する動きを連発している。2日にはトランプ政権下で2度目となる南シナ海での「航行の自由」作戦を実施。6月には、北朝鮮との違法取引を理由に中国の銀行に金融制裁を科したほか、台湾に総額14億2000万ドルにおよぶ武器売却を決定している。これらは、中国に対する不満の表れなのだろうか。
「いずれにせよ、トランプ大統領が中国への圧力を強化することは確実だ。今、アメリカ国内では、北朝鮮に拘束されていたアメリカ人大学生が帰国後に死亡した問題で、『北朝鮮に制裁を科すべき』という国民感情が高まっている。また、リベラル系メディアの代表格であるCNNまでもが対北制裁を求めるコラムを発表するなど、戦争に向けての世論が形成されつつあるといえる状況だ。
当面、焦点となるのは7日から行われるG20(20カ国・地域)首脳会議だ。今回の議長国はドイツで、どちらかといえば中国有利、アメリカ不利という構図になる。元来、頑固で意思を曲げないドイツは調整力が低く、本来であれば調整役を担うはずのイギリスはテリーザ・メイ政権がレームダック(死に体)化している。ここでどのような合意がなされるかが、今後の国際情勢を左右するだろう」(同)
北朝鮮、6回目の核実験を強行の可能性も
安倍晋三首相は、G20首脳会議において「北朝鮮問題への国際社会の連携を強く訴えたい」と表明している。また、G20首脳会議では米中首脳会談や米露首脳会談も行われる予定だ。
5日、韓国の韓民求国防大臣は、北朝鮮が6回目の核実験を強行する可能性について「高いとみている」と語っているが、核実験強行となれば、トランプ政権の設定する「レッドライン」(越えてはならない一線)を越えることになる。北朝鮮をめぐる情勢が、再び緊迫化してきた。
(文=編集部)