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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国の人権活動家死去、日本政府が示す意図的な「無関心」…習近平の民主化弾圧強化を黙認

文=相馬勝/ジャーナリスト

 ところが、チベット関係筋が明らかにしたところによると、トランプ氏はダライ・ラマが5月に訪米した際、希望した会見を拒否したという。トランプ氏はここでも、歴代大統領とは際立った違いを見せている。

対中弱腰外交

 日本も米国の対応と五十歩百歩だ。岸田文雄外相も14日午前の記者会見で、劉氏について「劉氏は自由と民主の追求に人生をささげられた」と述べ、哀悼の意を示したうえで、「自由、基本的人権の尊重、法の支配は国際社会における普遍的価値であり、これらが中国でも保障されることが重要だ。高い関心を持って中国の人権状況を注視していきたい」と強調した。

 しかし、その言葉とは裏腹に、日本政府は中国の人権に触れることには及び腰であるようだ。なぜならば、劉氏が末期がんであることがわかると、ドイツと米国の医師団が中国当局に治療のための中国訪問を要求したが、日本は医師団の派遣を表明していない。日本こそが最初に手を挙げるべきではなかったと感じる。

 中国は海外から国内の敏感問題について指摘されると「内政不干渉」を主張するのが常であり、その対応はときには外交に跳ね返ってくる。

 日中両国は2012年の沖縄県尖閣諸島の国有化問題に端を発した関係悪化を今も引きずっており、中国の民主化という微妙な問題に首を突っ込まないほうがよいというのが日本側の判断なのだろうが、このような及び腰の姿勢が「対中弱腰外交」と呼ばれる所以なのではないか。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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