インフラ輸出が失敗続きの中国だが、国内の経済状況はどうか。
「中国が抱えている借金は約33兆ドルといわれており、IMF(国際通貨基金)が想定している中国の借金はGDP比280%という巨額です。
これだけの借財をしているわけですが、まだなんとか輸出が回っていて対米貿易は黒字を保てている。しかし、この10年で中国の人件費は4倍にふくれ上がっているため、アメリカとすれば輸入するよりも自国でつくったほうが安い。そんな中国が今やっていることは、ダンピングによる輸出です。鉄鋼製品などに補助金をつけて赤字の状態で輸出しているのですが、明らかにWTO(世界貿易機関)違反です。先行きは非常に暗いですね。
中国国内の市場も、消費が減退してきています。中国経済は以前から自転車操業ですが、それでもなぜ倒れずに済んでいるか。理由のひとつは、輸出がまだ回っているということ。2つ目は、まだ海外からの直接投資があるということです。借金はすでに償還時期が来ているのですが、それを返すために新たに借金をして返すということを繰り返しています。
約2万2000kmの新幹線も建設費はほとんどが鉄道債でまかなわれており、利子の支払いが膨らんでいます。地方政府が行っている地下鉄工事なども、費用は地方債を発行することで返済を先延ばししています。
この自転車操業が回らなくなったときに、中国経済はガタガタに崩れるでしょう。そんなことは明らかなのに、不思議なことに日本の新聞は書かない。イギリスの『エコノミスト』や『フィナンシャル・タイムズ』などを見れば、そんな記事があふれていますよ」(同)
中国、経済崩壊なら軍部が大反乱か
では、いよいよ中国経済の崩壊が近いのだろうか。
「正確にいえば、中国共産党がどうなるかというのが問題です。あの一党独裁体制は強いですよ。軍全体で約230万人いるとされており、『中国人民解放軍』という名称ですが、国の軍隊ではありません。あくまで中国共産党を守るための軍隊なのです。
そして、第2軍隊的な人民武装警察が100万人くらい。インターネット監視団がアルバイトを含めて約200万人。これで国民を見張っているのです。彼らが3食きちんと食べて、ぜいたくができる。それによって独裁が保たれているわけですが、これは経済が繁栄しているからこそ成立します。仮に経済が悪化して彼らが食べていけなくなったら、必ず反乱を起こします」(同)
秋には、5年に一度の中国共産党全国代表大会が開かれるが、経済の立て直しについても議論されるのだろうか。
「今の情勢が続く限り、習近平国家主席が2期目を務め、執行部は習派が多数派を占めて権力固めが行われるという観測が主流です。『経済が順調』という前提で党大会を乗り切る。今は、それしか考えていないでしょう。そして、その後どうなるかというのは、彼らにとっても知ったこっちゃないのです」(同)
(文=深笛義也/ライター)