徳島県警三好署は、21歳の女性を詐欺の容疑で逮捕し、19日間にわたって勾留していたが、誤認逮捕だったことが判明し、大きな話題を呼んでいる。
徳島県警によると、女性は昨年8月、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「ツイッター」上で、人気アイドルグループ「関ジャニ∞(エイト)」のコンサートチケット売ると書き込んだ。これを見た京都市の女子中学生が女性に成りすまして詐欺を行ったのだ。
女性は当初から一貫して容疑を否認していたが、三好署は勾留を続け、実名で報道も行われた。
女性は確かにチケットを発送したと主張したが、警察は発送の事実を確認できなかった。ここで確認が取れていれば、無駄な勾留は防げたはずだ。
実際の事件の流れは次のようになっている。
・女性のチケット売却の書き込みを見た女子中学生は、8万円で購入する契約を結ぶ
・その後、女性に成りすまして2人に、それぞれ4万円で売却を約束
・2人が女性の口座に入金
・女子中学生は転売サイトを使い6万5000円で転売し、代金を受け取る
・転売した相手の住所を女性に伝え、発送させる
・4万円入金したうちのひとりが警察に相談し、女性を詐欺容疑で逮捕
警察は書き込みの事実があったことに加え、現金の振り込み先も女性名義だったことから、女性が犯人と断定して逮捕に踏み切ったようだ。
女性を19日間勾留した後、処分保留の状態で一旦釈放。そこで女性が自ら郵便局での発送記録を取り寄せて裁判所に提出し、誤認逮捕が発覚した。
弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士は、検察は誤認逮捕があっても簡単には認めないと指摘する。
「勾留中の被疑者については、検察官が起訴するか起訴しないかを判断します。仮に、誤認逮捕と判明した場合、急いで釈放しなければなりませんが、『不起訴』という正式な処分をする前に釈放してしまいます。
実は、検察庁は上長の決済がないと何もできない官庁なのですが、誤認逮捕とわかっていても、部下検察官が上司検察官の決済をもらうまで時間がかかるので、とりあえず釈放しておこうとなるのです」(山岸弁護士)
今回の場合、釈放された女性が自ら無実の証拠を用意して誤認逮捕が発覚したが、警察のずさんな捜査が浮き彫りになったといえる。
女性に成りすましていた女子中学生は書類送検されたということだが、名誉を深く傷つけられた女性に対しては、どのような補償がなされるのだろうか。
「誤認逮捕と判明した場合、法務省が定めた『被疑者補償規程』に基づき、逮捕・勾留されていた1日当たり、1000円から1万2500円が支払われます。1日当たりがいくらになるかは、拘束された期間やその種類、拘束されている間に失った財産の額、拘束されていなければ得るはずだった利益の額、精神的苦痛、などを勘案して決められます。したがって、最大、1万2500円×19日=23万7500円が補償として支払われることになります」(同)
三好署の幹部は女性の自宅を訪れ謝罪したが、その際、女性は「憤りを感じている。今後、こうしたことのないようにしてほしい」と訴えたという。インターネット上での売買は、詐欺被害のみならず、無実の罪で逮捕される危険もあると世に知らしめた事件となった。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)