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海上自衛隊、取材者ブラックリスト作成で一部取材対応拒否か…違法の可能性も

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 もしこれら指摘した内容がすべて事実ならば、わが国憲法で定められている「表現の自由」「検閲の禁止」のみならず、憲法15条の「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」という規定を海上自衛隊としてないがしろにしていることになる。また、「国民の知る権利」への妨害であり、「行政機関電算処理個人情報保護法」や「個人情報保護法」に違反する行為にほかならない。

 個人情報保護法では、取得した個人情報についてその利用目的が制限されている。その職務と関係のない理由で、問い合わせ・取材を行った人物に関する個人情報について、外部はもちろん海上自衛隊内でも海幕広報室外で用いたのであれば、これは官の立場を利用した「個人情報の持ち出し」であり、法律違反だ。

●都合の悪い記事は潰す?

 ある現役海上自衛官は言う。

「昨年の4月頃、護衛艦『みねゆき』艦長のSNS利用事案が記事化されるずっと前、これが記事になるという話は、海上自衛隊内部、特に海上自衛隊生徒出身(以下、生徒出身と略)の隊員の間では話題になっていました。『みねゆき』艦長(当時)が生徒出身ということもあるのでしょう。同じく生徒出身の護衛艦隊通信班長(海曹長)なども、海幕広報室とは所掌外にも関わらず、かなり気にしており、記事を書くという経済ジャーナリスト・秋山謙一郎氏についての人物像と思想、経歴や交友関係を聞くべく、あちこちに電話で問い合わせていました。

 もちろん、なんとか記事を差し止められないかという含みがあってのことです。複数人からそういう話を聞いたが、どうも元をたどれば海幕広報室員のA氏(仮名)らしい。このA氏も生徒出身です。A氏が中心となって、護衛艦「みねゆき」艦長SNS事案の記事差し止めを目的とした工作が行われていたことは間違いありません」

 こうした動きについて、海自の内部調査で、海幕勤務の生徒出身の1等海佐は「海上自衛隊生徒OB会の席上、『護衛艦みねゆき艦長SNS利用事案が記事になるかもしれない』との話は聞いた」という事実について認め、ここでは記者の人物像や経歴、交友関係について話題になったという。だが、記事差し止め工作については「そんなこと言いませんよ」と内部調査に当たった海幕高官に対し言下に強く否定したようだ。

 さて、「記事差し止め工作」疑惑はさておき、前述の内部調査で海幕勤務の1等海佐(生徒出身)が語った内容、及び複数の関係者の話を総合すると、海幕広報室員のA氏が、取材者の個人情報と取材内容を、自らが所属する海幕広報室外のみならず、民間人も含まれる海上自衛隊生徒OBらという海上自衛隊の「外」に「個人の判断で」持ち出した事実はくっきりと浮かび上がる。この行為は、個人情報保護法違反の疑いが極めて高い。

 こうした行為がまかり通るのならば、もし、役所に問い合わせや取材を行えば、その役所の担当部署に属する人物が、問い合わせ者や取材者の個人情報や取材内容を外部に持ち出すこととなり、今の時代、個人情報保護法の兼ね合いから、決して許されない。海上自衛隊以外の省庁では、まず行われることではない。

 にもかかわらず、なぜこうした事態が起こってしまうのか。ある現役自衛官は言う。

「海幕広報室員のA氏にとってみれば、「みねゆき艦長SNS不正利用」報道を潰せば海幕広報室内では自分の手柄となる。また海上自衛隊生徒OBの間では“ええかっこ”できるからではないか」

 なお、みずからの職権で得た、取材者の個人情報を外部に漏洩し、「人の権利を侵害する」行為は、海上自衛隊「懲戒処分等の基準に関する達」によれば、免職も有り得る重罪である。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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