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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

トランプの韓国訪問、北朝鮮が軍事攻撃の可能性…米軍は空母展開、韓国素通りも検討

文=相馬勝/ジャーナリスト

 トランプ氏の文氏への反発と、安倍首相への共感を裏付ける場面が今年9月にニューヨークで行われた日米韓首脳会談でみられた。

 文氏が北朝鮮に対する800万ドル(約9億円)もの韓国による人道支援に触れたことで、トランプ氏自身が「北朝鮮への人道支援は逆のメッセージとなる。とても賛成できない」と反対の意向を強く表明したことからも明らかだ。安倍首相もトランプ氏に賛意を示して、厳しい表情でこう語った。

「北朝鮮は、核やミサイル開発に回す金がある。その金を人道目的に回すべきじゃないのか?」

 トランプ氏は安倍首相の発言に横で深々とうなずいたのだった。このようなトランプ氏の文氏への悪感情が、トランプ氏のアジア諸国歴訪で韓国を素通りしようとした理由になったのは容易に想像できよう。

日本は2泊、韓国は1泊

 また、米紙ワシントン・ポストによると、文政権がトランプ氏のDMZ訪問に反対する意向を示していたという。その理由について、同紙は「文政権は北朝鮮に誤解され軍事衝突を招く可能性があることや金融市場への打撃、平昌冬季五輪への支障が出ることを恐れている」などと報じている。

 実際、トランプ氏はこれまで金氏について、ツイッターなどで「とるに足らないとケットマン」とか、「国民を飢えさせ、殺すことを気にもとめない狂った男」と批判してきた。これに対して、朝鮮中央通信は金氏の声明として「わが国と人民の尊厳と名誉、そして私自身のすべてをかけて必ず代価を払わせる。史上最強の超強硬対応措置の断行を考えている」と強調したうえで、トランプ氏について「アメリカの老いぼれ男を必ずや火で罰する」と最大級の表現で罵詈雑言を浴びせて、その殺害さえほのめかしている。

 このため、ホワイトハウスでは、トランプ氏の韓国訪問に合わせて北朝鮮がソウルを砲撃する可能性を懸念。それを警戒して、米空母3隻が北朝鮮情勢への対応を担う第7艦隊の管轄海域に同時展開することになったという。

 韓国内では「トランプ氏の日本滞在が2泊3日なのに、韓国滞在は1泊2日と差をつけられた」との不満がくすぶっており、その分、文氏への風当たりも強くなっている。米韓関係は波高し、といわざるを得ない。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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