千代田区長 石川まさみ オフィシャルサイトより
小池百合子東京都知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」が形骸化するなか、「区政ファースト」を標榜する東京都千代田区においても、区民から「千代田区政の税金の無駄遣いが目に余ります」という告発文書が筆者のもとに届いた。
千代田区といえば、今年2月に行われた区長選で自民・公明が推薦する新人で、与謝野馨氏の甥である与謝野信候補と、小池都知事が支援する現職の石川雅己候補の一騎打ちが記憶に新しい。千代田区は“都議会のドン”と呼ばれた内田茂氏の地盤だったことから、小池都知事と自民党都連の“代理戦争”といわれ、都民のみならず日本中から注目された。結果は「区民ファースト」を全面的に打ち出した石川氏が圧勝。現在は5期目を務めている。
そんな千代田区で“税金の無駄遣い”とは何なのか。
告発文には「千代田区は公共施設の建て替え計画を進めてます。区営四番町住宅・保育園・児童館・集会所の複合施設(A施設)と区営四番町アパート・図書館・職員住宅(B施設)を一方的に整備する建て替え計画です。当初はA施設のみの建て替え計画でした。それは、児童施設の老巧化やバリアフリーの不十分さを原因としています。その間、区営住宅の居住者の仮住宅はB施設の職員住宅を充てる予定でした。ところが途中からB施設を含む一帯建て替えに変更されました。(中略)B施設の図書館は六年前ほど前に改修したばかりです。区営アパートも一昨年まで約2億円かけて排水工事が行われ、各戸の便器・トイレ・下駄箱なども取り換えたばかりです」
千代田区の発表では、四番町にある区営住宅を中心とした公共施設の建て替えの理由を「設備全般の経年劣化」ほか「住宅と他の施設との動線が混同していることによるプライバシー等の問題」や「施設の広さ・配置に関する利便性の問題」などとしている。だが、この問題を調べているある千代田区民は、強い違和感を覚えるという。
「千代田区は平成24年度に区営住宅の使用期間を60年に延長すべく、多額の税金をつぎ込み改修しました。それにもかかわらず今回、築30年にすぎない区営アパートを建て替えるのは税金の無駄遣いです。それに区営住宅と区営アパートの同時建て替えにしたために、仮住宅が必要になりました。平河町に建てられるこの仮住宅には、実施設計等含めて20億円の税金をつぎ込むことになります。しかも、建て替えが終了した後の仮住宅の使用計画は未定です。平河町の住民からは、公有地の跡地は区民の共有財産だから、『使途を区民から広く募集し、決定してから建設すべき』という陳述書も寄せられています」(筆者の取材に応じた千代田区民)
また、建て替えが決まった区営アパートには高齢の住民が多数暮らしているために、現在の生活圏から離れた仮住宅に移転することに対して、生活や健康の不安を抱えているという。高齢者以外の住民にも、経済的な不安を抱え反対している人は少なくないようだ。それにもかかわらず、区は強引に計画を進めている。
高級マンションを次々と転売
さらに、四番町公共施設の建て替えについて、区議会で追及している日本共産党の木村正明区議の調査で、石川区長の“高級マンション売買”に関する疑惑が浮上していることが明かになった。
すでに横浜に自宅を持っていた石川区長は、区長になってから千代田区内に高級マンションを4つ購入。そのうち3つを転売。購入したマンションは大京、三菱地所、住友不動産、三井不動産といずれも豪華なものだ。特に、2014年に購入した三井不動産のマンションは、区の都市計画決定で容積率を1.8倍に増やしたもの。つまり、三井不動産は直接的な利害関係者である。このマンションは40階建てで約500戸を有する。単純計算だが、容積率が増えたことで約220戸が増え、1戸1億円とすると、三井不動産は220億円の売上増を実現したことになると、木村区議は区議会で指摘している。そのマンションを石川区長は購入からわずか2年半後の今年1月に売却しているというのだ。
前出の住民は「現在、区長が住んでいる三菱地所のマンションは2億円を下らない。最近、購入した住友不動産の豪華マンションも1億円はくだらない。一体、どこにそんな資金があるのか。木村区議が石川区長に質問すると『失礼ですよ。こんなこと言うのは』と開き直って、答えないんです」と言う。
石川区長がマンションを購入した4つのデベロッパーや系列業者のどこかは、今後、千代田区の公共施設の建て替えに関与してくる可能性がある。区民から「税金の無駄遣い」との誹りを受けている区の開発が、強行に進められている実情を踏まえると、「業者との不適切な関係」を疑われても不思議ではないだろう。石川区長も「区民ファースト」を標榜するのであれば、不信感を持たれるような行政や自身の財務状況についても、徹底して説明責任を果たすべきだ。
(文=本多圭)