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【加計問題・住民訴訟】96億円補助金支給の全貌、安倍首相の便宜供与を解明へ

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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「また、建設費の水増しやお金の流れも明らかにしていきたいと考えています。今治市が加計学園に建設費の半額を補助金で援助すると決めましたが、そもそも192億円かかるという建設費の見積もりが、加計学園任せだったことがわかっています。市は、事前に設計図面や見積書を入手してその金額を検討することすら行っていなかったのです。私たちが独自に入手した設計図を基に、専門家に見積もり試算をお願いしたところ、加計学園が計算した見積もりの半分以下になることがわかっています。そこで裁判に当たって、獣医学部の事業計画書や設計図面などの資料を裁判所に提出することを求める『文書提出命令申立書』を提出しました」

「代表の阪口徳雄弁護士をはじめ、現在9名の弁護士さんがこの訴訟を全国から支える態勢が整いつつあります」

 一般的に、自治体の補助金が建設費全額の2分の1を占めるという手厚い事業は、なかなかない。しかも建設費の見積もりに当たって、設計図面や見積書を事前に入手せず、192億円という金額の妥当性すら検討していなかったというのだから驚く。これでは、黒川氏らが指摘するように、水増し請求してもチェックできず、単に学園側に公金を垂れ流しただけと言われて仕方がない。当然、県が32億円を助成するということもなくなると考えられる。

 これに対して今治市側は、第1回の口頭弁論では被告の主張に対して棄却することを求める答弁書を提出し、口頭弁論には被告弁護士は出席しなかった。

加計学園、千葉科学大学

 獣医学部は6年制であり、学生が実験などを行う際の安全性、獣医資格取得や就職先の確保なども問題となる。世界最先端の鳥インフルエンザ対策の研究などと謳っている以上、施設の安全性は周辺環境への影響も考えて準備することが求められる。

 加計学園は04年に千葉県銚子市に千葉科学大学(薬学部、危機管理学部、看護学部)を開校した際に、銚子市から大学用地(15ヘクタール)の無償貸与を受け、95億円の補助金を申請。最終的には77億5000万円を支給されている。

 13年経過した今、千葉科学大学の実態はどのようになっているであろうか。大学側は薬学部の国家試験合格率を85.7%と報告しているが、入学者数(11年度)比合格率ベースでみると31.17%であり、私立の薬学部57校中52位である。ちなみに卒業率は36.4%、入学定員充足率は90.6%、入学受験時の実質競争倍率は1.2倍である。

 つまり入学者の4割弱しか卒業できていない一方で、6年間で計1182万円(いずれも『週刊東洋経済』(東洋経済新報社/11月11日号)より)、毎年約200万円もの学費を徴収している。

 これが千葉科学大学の実態である。加計学園は単にその時に学生を集められそうな学部設置によって、補助金を確保したいだけのようにもみえる。人を育てる教育機関の設置というよりは、学生を集めて授業料が確保できれば良いという大学設置ビジネスであれば、今治市が大学の誘致によって地域活性化を狙うという主張は正当化されない。

安全面の問題

 住民訴訟の最大争点は、加計学園が今治市で進める研究棟・校舎建設費用が、通常の2倍近く過大に見積もられているという点にある。独自に入手した設計図面について専門家に費用分析を依頼したところ、鉄骨構造であり、坪単価150万円掛かる計算になっているが、実際にはせいぜいその半分ぐらいでしかないという評価だった。加計学園は建設費が192億円だとしているが、実際にその半分の費用で建設すれば、実質ただで校舎建設できることになる。

 黒川氏らは加計学園とこの設計図面をめぐってやり取りしているが、校舎の最上階の眺めの良い場所に、パーティー会場やワインセラーなどを設置する計画があったことが判明した(その後に設計変更)。また、研究・実験施設はコンクリートをベースにした鉄筋コンクリート造りではなく、安価な鉄骨構造となっているが、専門家によると鉄骨構造では密閉性が確保できず、細菌の研究施設としては不向きだという。

 12月7日、文教科学委員会、内閣委員会の連合審査で、森ゆうこ参院議員(自由党)は、石破4条件をクリアしていないと指摘した。4条件の一つに従来の獣医学部では行っていない国際的にも最先端の獣医学研究を行うという点がある。その研究を可能とするためには、炭疽菌などの病原菌を扱い可能なバイオセイフティー施設(BSL3)が必要になる。文科省の報告では、厚労省によってガイドライン基準を満たしていることを確認したことになっていたが、厚労省は説明は受けていないと答弁した。

 結局、文科省政務次官の答弁の結果、加計学園はBSL3を設置するとだけ説明し、詳細内容の報告は受けていなかったことがわかった。「安全確認のために厚労省の確認が必要になっているのに、これで最先端の研究施設といえるのか?」。森ゆうこ議員の発言に委員会は大きくざわめいた。

 結局、コストを抑えるために安全性がおろそかにされ、学生や研究者の安全が確保されないだけでなく、周辺環境に細菌が拡散される恐れもあることが、国会論議のなかで指摘された。

 加計問題は、国会論議と並行して住民訴訟が展開されることとなったが、学園の設置認可が正しかったのかという点や、安全性の問題について議論が進んでおり、今後の動向から目が離せない。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

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