12月20日、加計学園問題をめぐる住民訴訟(愛媛県今治市)の第1回口頭弁論が松山地方裁判所で行われた。同訴訟で「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の黒川敦彦氏、武田宙大氏は、今治市が加計学園に無償譲渡した36億7500万円相当の市有地の返還、および最大96億円に上る補助金支給の差し止めを求めている。
加計学園は認可前に校舎建設を進め、その点の是非を審議することなく文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)は11月9日、加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部新設を認めるとの答申を同省に提出した。また、林芳正文科相は国会審議に諮ることなく、同月14日に認可の判断を下してしまった。
これについてNHKの世論調査では「認可は妥当」とする声は20%で、「妥当ではない」は32%に上り、どちらでもないという意見は38%であった。森友問題をめぐる最新の各種世論調査でも、概ね80%前後の国民が「納得していない」という結果であり、安倍政権の「もり・かけ」問題への批判は強く、来年もこの問題は持ち越される様子である。
両問題に共通しているのは、安倍首相による縁故者への便宜供与という点である。森友問題では、名誉校長を務めていた安倍首相夫人の昭恵氏の働きかけで、国有財産が格安で払い下げられ、その払下げが根拠不十分で不適切であったと会計検査院が指摘した。また、加計問題では学園が開校すれば国から助成金がつぎ込まれるだけでなく、受け入れ自治体が巨額の助成を行おうとしていた。この加計学園の理事長である加計孝太郎氏は、安倍首相の腹心の友として知られている。
一方、今治市の菅良二市長は大学誘致による地域活性化を訴えてきたこともあり、認可決定前の16年末には校舎建設工事着工に協力してきた。しかし、市の財源を使って巨額の補助金を出す以上、住民や議会に十分な説明を行い、何よりも市行政自体が精査する必要があった。
今回の訴訟は、今治市のずさんな補助金支給の是非を問う住民訴訟である。今治市は加計学園が獣医学部を建設するに当たって、市有地16.8ヘクタール(評価額36億7500万円)を無償で譲渡したうえ、校舎や研究棟などの建設費約192億円の半額を愛媛県(32億円)と今治市(64億円)が補助金として支給するとした。年間予算は、約800億円であり、1500億円の財政赤字を抱える今治市は、この決定を17年3月の定例議会の冒頭で提案し、当日中に決定している。