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こうしたなか、文大統領は南北和解ムードを形成したいとしても、米国・北朝鮮間で核開発問題に歩み寄りの可能性が見えないなか、その成功の見通しは当面低い。ここに、文大統領の「条件を整えて実現させよう」との発言がある。この言葉は、別の言い方をすれば、「まだ実現への条件が整っていない」ということになる。
韓国の東亜日報、朝鮮日報、中央日報が首脳会談提案について社説を掲載しているが、「この提案にあまりにも前向きになって米韓関係を壊すな」というのが基本主張となっている。
北朝鮮の狙い
今日、北朝鮮の最大の目的は、国際社会が北朝鮮を核保有国として認知することである。つまり、核開発進行中の現状を維持することにある。現状が継続すれば、核保有国としての態勢が一段と進む。したがって、
・韓国が冬季オリンピックを無事に終結したい
・そのためには北朝鮮の妨害を阻止しなければならない
・その手段として北朝鮮に平昌五輪をめぐる融和策を示した
という情勢を踏まえ、北朝鮮は南北首脳会談を提案した。
今後の見通し
最大の焦点は、米韓軍事演習の動向である。米国は平昌五輪期間中は米韓軍事演習をしないこととしたが、それが終われば、4~5月に開始する。この演習には北朝鮮への攻撃訓練が含まれる。当然北朝鮮が反発し、ミサイル発射や核実験等を行う可能性が高い。したがって4~5月頃、再度緊張が訪れる可能性が高い。
文大統領はこうした緊張を避けたい意向が強い。そこで、「南北首脳会談が検討されているなか、米韓軍事演習への韓国軍の参加のレベルを下げたい」と米国側に伝える可能性が十分想定される。
ここで、米韓関係に緊張状態が出てくる可能性は十分ある。もしそのような状況が出れば、韓国国内で韓国主要紙が中心となり「米韓関係を壊すな」というキャンペーンが展開する可能性もあり、その際は韓国国内政治も動揺する。
ちなみに、こうしたなかで日本が韓国に対して、南北首脳会談にどう臨めとか、あるいは米韓軍事演習にどう臨めなどと発言をしても、その動向になんらの影響ももたらさない。
(文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長)
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