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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国、習近平が終身国家主席か…2百万人の幹部処分、1千万人殺戮の文化大革命再来の懸念

文=相馬勝/ジャーナリスト

 そこで党幹部らを集めて内部講話を行い、「ソ連はなぜ崩壊したのか。ソ連共産党はなぜ下野してしまったのか。重要な原因のひとつは理想、信念の動揺だ。最後には、一夜の間に、城に掲げている大王の旗を変えてしまった。この教訓はわれわれにとって非常に深刻だ」と述べたうえで、こう結論づけた。

「ソ連の歴史やソ連共産党の歴史を全面否定し、レーニンもスターリンも否定し、すべてを否定し尽くし、歴史の虚無主義に陥り、思想も混乱し、(中央や地方の)各レベルの党組織は何もしなかった」

 ソ連共産党指導部の共産主義に対する信念が揺らぎ、地方や中央にかかわらず党組織がばらばらになって機能しなくなったことを、ソ連共産党の一党独裁放棄およびソ連邦崩壊の大きな原因と指摘したのだ。

 では、なぜ「ソ連共産党指導部の共産主義に対する信念が揺らぎ、地方や中央にかかわらず党組織がばらばらになって機能しなくなった」のか。習氏は、「多くの党員が物欲や金銭欲、権力欲にまみれて、共産主義の理想を忘れてしまったからだ。つまり、ソ連共産党という巨大な組織は『腐敗』という白アリによって根こそぎ食い破られたのだ」と喝破している。習氏は、共産党の理想社会をつくるには腐敗を撲滅しなければならないと強調しているのだ。

 習氏はそれを現実のものにするために、総書記就任の重要講話で、「反腐敗運動を起こして、腐敗幹部はトラもハエも叩く」などと宣言したのだ。その言葉通りに、習氏は5年間で200万人以上の汚職幹部を処分した。

 習氏の右腕として辣腕を振るったのが、盟友の王岐山・党中央規律検査委員会書記だった。その王氏は昨年10月の党大会で党の役職をすべて辞任し平の党員になったものの、引退せず、全人代では国家副主席に任命される可能性が高い。習氏は国家主席であり、終身主席になるならば、王氏も同様に終身副主席となることも可能だ。

軍権を掌握

 それはともかく、習氏は今回の全人代で国家主席、副主席の任期の条項を憲法から削除すれば、党や軍の最高指導者としての地位も安泰となる。とくに中国の場合、毛沢東時代から「政権は鉄砲から生まれる」と言われるように、軍権を掌握しないと、いつ最高権力者の座から引きづり下ろされても不思議ではない。その逆も真なりで、中国共産党政権においては軍権を掌握すれば、かつてのトウ小平氏のように「最高実力者」として「最高権力者」を倒す力を持つことができるのである。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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