回答を避ける財務省
3月2日の国会で、この問題で野党の追及が続いた。特徴的だったのは、財務省は国会議員へ開示したものと異なる文書の存在を否定せず、検察の捜査への妨げになると答弁を避けたり、先伸ばしている点である。結局この日は翌週6日までに調査して返答すると太田 充理財局長が答弁したが、その6日になっても存在すら明らかにせず、麻生大臣は「膨大な資料のなかから見つけるのは困難」という答弁を行っている。一方、7日には与党幹事長がそろって財務省に提出を求めたが、いよいよ決裁原本が提出されるとされた8日に提出されたのは、これまで国会議員に提示されていた文書のコピーであり、「ゼロ回答」であった。
そして9日、森友学園への国有地売却交渉を担当した部署に所属していた近畿財務局の職員が7日に自宅で首をつり、搬送先の病院で死亡していたことが判明。さらに、理財局長時代に国有地売却に関連する文書を「廃棄した」と国会答弁していた佐川宣寿国税庁長官が辞任を表明した。
財務省が事実をすぐ公表していれば、その担当者の「死」は避けることができたのではないか。この文書取扱責任者は明らかであり、その責任者が書き換えたのか、書き換えていないのかという実に単純な問題である。決裁原本から削除された部分をはっきりさせ、どのように書き換えられていたのか、その事実をまず明らかにすることが必要である佐川長官が辞任したとしても、国会での証人喚問に召致し、書き換え疑惑に対して真正面から答えさせるべきだ。謝罪と今後の対処方針を明らかにする必要がある。
森友問題の核心
朝日のスクープによって、財務省と森友学園の貸付契約と売買契約が改めて国会審議の俎上に上り、国がいかに森友学園を特別扱いし、実際に特例的に処理されてきたかが明らかになった。背景をなぞりながら、国が隠そうとしている実態に光を当てたい。
国有財産の払い下げは、当然一般競争入札による処分が原則である。ただし学校法人や福祉法人などに入手希望があると、優先的に随意契約することができる。もちろん、その場合も鑑定価格を上回る入札が契約成立の条件とされる。今回の払い下げ用地はまず12年に隣接する大阪音楽大学が手を挙げ約7億円で入札したが、鑑定価格の約9億円に満たず払い下げは行われなかった。
その後、13年に手を挙げたのは森友学園であるが、この時点では森友学園は私立の学校法人格も持たず、学園用地も持っていなかった。学校法人でなければ国有地の払い下げを優先的に受ける権限はなく、学園用地を持たなければ大阪府が持つ学校法人としての認可を受けることも不可能だった。いわば、為す術がない状況に追い込まれていたのだ。
ところが国交省大阪航空局は14年10月、森友学園に校舎建設のためのボーリング調査を許可し、森友学園はその調査結果を「仮称M学園小学校新築工事調査報告書(14年12月)」にまとめる。国による払い下げや大阪府の認可の出ていない14年の段階で、森友学園が同用地に学校を建設することが決定事項であるかのようにボーリング調査を行ったのである(※1)。