北朝鮮、拉致交渉で日本に巨額要求か…トランプを「勘違い」させた金正恩の外交テクニック
本連載前回記事では、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がアメリカのドナルド・トランプ大統領との米朝首脳会談で使った「5つの交渉術」についてお伝えしました。
金正恩は、「強い後ろ盾を得る」「相手の立場を熟知する」「自分の手の内は明かさない」というテクニックを駆使し、トランプとのビジネスにおいて圧倒的勝利を収めました。今回は、残りの「相手の弱みを逆利用する」「頭を抑えれば尻尾はついてくる」について、お伝えします。
「相手の弱みを逆利用」でトランプを騙し討ち
金正恩の挑発に乗るかたちで一度は会談中止を発表したトランプですが、一転して「やる」と言い出したのは、金正恩の思惑に気付いたからかもしれません。
また、北朝鮮に対して強気の立場を崩さないトランプですが、実はどうしても米朝首脳会談を成功させなくてはならない理由がありました。それは、11月に控える中間選挙のために支持者の得点を稼いでおかなくてはならないこと、国内で「ロシアゲート」の捜査が進んでいることです。
そんななか、もし北朝鮮の非核化を実現させて朝鮮半島に平和がもたらされれば、一発逆転のチャンスになると同時にノーベル平和賞も夢ではありません。そこで、会談中止を発表後にすぐ金正恩から謝罪の書簡が届いたのを見て、「今なら、弱っているこいつに言うことを聞かせることができる」と思ったのでしょう。
大国アメリカのリーダーであるトランプは力で決着をつけようとしますが、小国北朝鮮のトップにすぎない金正恩は力ではなく策謀で勝負する。それまで力の喧嘩しかしてこなかったトランプは、策謀にはうとい。「そこがトランプの弱点だ」と見抜いていた金正恩は、終始トランプに恭順の意を示し、強いトランプにやられたふりをしたのです。そして、トランプは「金正恩を力でねじ伏せた」と信じきって、上機嫌で会談に臨んだことでしょう。
しかし、蓋を開けてみると、2人が署名した共同声明にはアメリカが求めていた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」について明記されていないばかりか、「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の完全な非核化を目指す」となっていました。
南北首脳会談での板門店宣言に続き、ここでも「朝鮮半島の非核化」が盛り込まれたことで、北朝鮮単独での早急な非核化はほぼなくなったと見ていいでしょう。トランプは自分を「優れたビジネスパーソン」だと思い込んでいるようですが、いわば古いタイプのビジネスパーソンです。「口約束でも、一度約束したならしっかりと守る」というのがビジネスの王道。しかし、文書がすべての国際関係のなかでは口約束にほとんど効力がないことを、あまりよくわかっていなかったのかもしれません。
「頭(アメリカ)を抑えて尻尾(日本)を操る」
ここで気になるのは、米朝首脳会談の結果が日本にどのような影響を及ぼすかということです。
すでに、トランプは「(朝鮮半島)非核化の費用は、日本と韓国が負担するだろう」と言っています。当事者である韓国が負担するのは当然ですが、なぜ日本まで負担させられるのでしょうか。
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