傘下の都道府県連盟幹部や元選手ら関係者333人から告発状が出され、一躍渦中の人として急浮上することとなった日本ボクシング連盟とそのトップである山根明会長。その山根会長が8月3日、朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)に生出演した際の発言が物議を呼んでいる。
「おととい、元暴力団の森田組長から、私の知人を朝方の1時頃呼んでは、『山根に言っとけ。3日以内に引退しないと、山根の過去をバラすぞ』と脅迫を受けました。だから私は立ち上がったんです』(番組内での山根会長の発言)
実はこの発言が出る以前から、告発問題が報じられたと同時に、ヤクザ業界関係者の間に広まっていた噂があった。それは「山根会長が元暴力団員であった」という話だ。それも今回、山根会長の口からその名前が出た、森田組(すでに解散)の組員だったというのである。
もちろん、これは噂の域を出ないもので、確たる証拠や証言もない。3日の毎日新聞でも、山根会長と森田組の元組長とは「(元組長が現役時代から)交友関係があった」と報じるにとどめている。だが、前述の山根会長の発言で、森田組との接点があったことは裏付けられたわけだ。では、その森田組とはどのような組織であったのか。
森田組を遡ると、もともと大阪市に本拠を置いていた組織で、三代目山口組時代に本部長を務めた小田秀臣組長率いる小田秀組となる。小田秀組の最高幹部のひとりが、森田組の森田昌夫元組長となるのだ。
昭和59年、山口組四代目の発足にあたり、それに異を唱える勢力が山口組を離脱。新たに一和会を結成させ、のちに山一抗争へと発展していくわけだが、小田秀組の小田組長は一和会を支持。だが部下である小田秀組最高幹部らは山口組の離脱に反発。結果、小田組長は引退することとなり、小田秀組の勢力は4人の幹部らに引き継がれ、四代目山口組の直参に取り立てられることになっていく。直参へと取り立てられた4人のうちのひとりが森田元組長だ。この人物こそ、山根会長が脅迫を受けたと主張する相手である。
その後、森田組は三代にわたり、山口組二次団体組織として活動するが、六代目体制発足後しばらくすると森田組長は引退し、組も解散することになったのだ。
果たして、山根会長と森田元組長の関係とはどんなものだったのか。ある業界関係者は意味ありげにこう漏らす。
「森田さんからすれば、元飼い犬に噛まれたような心境ではないか」
実際、親分子分の間柄ではなかったとしても、山根会長が森田元組長に“なんからの力”を借りていたような密接な関係であった可能性は高いようだ。そうでなければ、今回の件にしても、山根会長が嘘や妄言を語っていない限り、共通の知人が存在し、森田元組長の伝言が山根会長に伝わるわけがない。
「森田さんはすでに引退して10年以上たっている。山根会長の言ってることが仮に事実で、『過去をバラすぞ』くらいの脅しをかけたとしても、当局は動かないのではないか。逆にこんなことをテレビで暴露してしまう山根会長の心境は、よっぽど穏やかではなく、冷静さを失っているようだ」(前出の関係者)
過去のヤクザとの付き合いが明らかになった山根会長。告発内容とは別に、事態は思わぬ方向へと進み始めている。
(文=沖田臥竜/作家)
●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。