8月15日に行われた世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級タイトルマッチで山中慎介(帝拳)にTKO勝ちしたルイス・ネリ(メキシコ)に、ドーピングの疑いがあるというセンセーショナルな報道がなされ、ボクシングファンだけでなくスポーツ界全体がざわついている。
WBCの発表によると、7月27日にメキシコ国内で実施された抜き打ち検査の結果、ネリに禁止薬物ジルパテロールの陽性反応があったという。ジルパテロールは筋肉増強剤としてドーピングを目的として使用された前例もある。また家畜を太らせる目的で使われることもあるため、食肉から知らずに摂取してしまう可能性も否定できない。
WBCは、山中戦の直後に採取した検体の検査などを実施し、あらためて判断を下すという。真偽のほどが明らかになるまでには、さらに時間を要するそうだが、その結果によっては、ネリは王座剥奪や選手資格停止などの処分を科される可能性もある。
ドーピングとは、禁止された薬物や方法を使用し、競技能力を高めることをいう。健全なスポーツマンシップに反した反社会的な不正行為である。近年、ドーピングに関する検査は非常に厳しくなっており、国際レベルのスポーツ競技でのドーピング行為は、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)が監視している。また、日本国内では、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)が、アンチ・ドーピング活動を推進している。
ドーピング検査には、競技終了後に実施される競技会検査と、競技会ではないところで実施される競技会外検査がある。競技会外検査は抜き打ち検査であり、ネリのドーピング疑惑が発覚した検査もこれにあたる。違反であることが判明すれば、成績・記録の抹消、選手資格の停止、出場資格の剥奪などの制裁が科せられる。また、選手だけでなく、ドーピングに関与したスタッフなどにも制裁がある。