1982年に公選法が改正されて全国区の比例代表制度が導入された。このときに政党や政治団体が比例区に候補者を立てるときは10人以上擁立しなければならないようになった。
翌83年から92年に供託金が値上げされるまでの間に、ミニ政党が多数登場して立候補者数が増え、「泡沫候補が濫立」したと国は主張している。
83年には福祉党やサラリーマン新党が旗揚げして議席を得ているが、まさか彼らのことも「真に当選する気のない泡沫候補」と考えているのだろうか。
そもそも「泡沫候補の濫立」というのは評価(主観)だろう。この場合の客観的事実は、2つ。
(1)選挙戦に参加する政党が増えた。
(2)立候補者数が増えた
この2つをもって「当選する気がない泡沫候補が濫立した」とは言えない。
国際人権規約に抵抗する国
さて注目していただきたいのは、原告が主張している「国連人権自由権規約25条違反」だ。市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)に違反していると原告は主張する。
日本は79年に、この規約を批准した。
第25条
すべての市民は、第2条に規定するいかなる差別もなく、かつ、次のことを行う権利及び機械を有する。
(a)直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。
(b)普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。
(c)一般的な平等条件の下で自国の公務に携わること。
OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国のうち、22カ国には選挙供託金制度がなく(01年)、あっても少額で、日本の選挙区出馬に必要な「300万円」は世界一高い。そうなると25条の「平等の選挙権」と言い切るのは難しいだろう。
さらに96年に採択された「一般的意見」があり、これは25条の正式な解釈を示している。
【一般的意見25の15】
「選挙による公職に立候補する権利及び機会の実効的な実施のためには、 投票権を有する者に対し立候補者の選択の自由を確保することが必要である。年齢等、 立候補する権利の制限は客観的な基準に基づいて正当化されるものでなければならない。本来立候補する資格を有する者は、 教育、 居住関係又は門地等の不合理又は差別的な要件により、又は政治的所属を理由として排斥されてはならない(以下略)」
【一般的意見25の16】
「選挙の、 指名日、 手数料又は供託金に関する条件は合理的なものでなければならず、差別的であってはならない(以下略)」
どう解釈しても、世界一高い供託金を払わなければ立候補できないのは、国際自由権規約25条に反しているように見える。
さらに憲法44条の「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない」という規定と現実は相当なずれがある。
このように、憲法違反だけでなく国際人権条約に違反していると問題提起されているのが「供託金違憲訴訟」なのだ。
(文=林克明/ジャーナリスト)
第11回 口頭弁論
東京地裁103号法廷 12月21日(金)11:00開廷
傍聴券抽選 10時40までに裁判所正面入り口付近に集合
※次回で結審となる可能性がある。