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「京都府内には、4つのDMO(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション=行政・地元経済界・旅行業界・マスコミが連携した地域の観光資源を発掘・宣伝する法人組織)があります。しかし、4つともインバウンドを取り込もうという戦略を立てていません。むしろ、日本人観光客にターゲットを置いています。その理由は、京都にとって観光業は交流人口を増やすことを主目的にしているからです。交流人口を増やし、交流した人たちが、いずれ京都に居住する、移住者を呼び込むというのが、京都の観光政策の根底にあります。京都が観光業に力を入れているのは、長期的な視点に立った人口増加政策といえます」
一方、観光コンテンツが乏しい地方都市では、いまだインバウンドをターゲットに据える向きは強い。特に、地方都市は中国人観光客の呼び込みに必死だ。もはや国内市場では中国人観光客を取り合う状況になっており、いわば中国人観光客市場はレッドオーシャンにあたる。
そんなレッドオーシャンになりつつあっても、地方は中国人観光客の呼び込みに力を入れ続ける。それは、先にも触れたように爆買い中国人のインパクトが強かったからだ。本来、観光客層が変われば、飲食やお土産品の売れ筋はガラリと変わる。観光地や地元自治体・観光協会などは販売戦略の見直しを迫られる。しかし、東京や大阪などとは異なり、地方の観光地は目まぐるしく変わる観光需要に対応できる体制になっていないのだ。
目先のインバウンドを追わない京都の観光戦略は、絶対王者・京都だからこその発想だろう。観光資源が乏しく、「どうすれば足を運んでもらえるのか」「地元産業を活性化させるためには、どんな観光戦略を打ち出したらいいのか」と苦悶している地方自治体には不可能な芸当だ。いつまでも中国人観光客が日本を訪れてくれるとは限らない。あくまでも、インバウンドは水モノ。先行きは不透明だ。
観光業界の潮目は変わりつつある。インバウンドに依存しない京都の観光戦略は、地に足の着いた政策といえる。果たして、追随する自治体は出てくるのだろうか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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