続いては世田谷区。ここには、馬術の競技会場となる馬事公苑がある。
「馬事公苑の周辺道路には(喫煙所の)適地がないのが実態でして、世田谷区としては今のところ、東京五輪に合わせて喫煙所を新設する予定はございません。しかし、それとは別に、昨年10月から『世田谷区環境美化等に関する条例』を施行し、区内の道路・公園は全面禁煙になりました。
それからは、電柱巻き看板を設置したり、路面標示シートを整備したりと広く周知することによって、路上喫煙が起こらないよう啓発を進めているところです。標示には日本語だけではなく、“NO SMOKING”という英語表記や、喫煙禁止を表すマークを入れており、外国人の方にもわかっていただけるかたちを取っています」(世田谷区環境政策部環境計画課)
それでは、メイン会場となる新国立競技場(開催競技:陸上、サッカー)の建設が日に日に進行している新宿区の場合はどうか。
「今の段階では、新たに喫煙所を会場周辺に設置することは検討しておりません。というのも、新国立競技場の住所自体は確かに新宿区で、最寄り駅は都営大江戸線の『国立競技場駅』なのですが、実際にはJR中央線の『千駄ヶ谷駅』(渋谷区)や東京メトロ銀座線の『外苑前駅』(港区)など、他の区を経由してアクセスなさる方も多いのです。
新宿区の駅ですと、JR中央線の『信濃町駅』からも新国立競技場まで歩くことができ、同駅前にはある程度の大きさの喫煙所を設けています。近くに病院があるという場所柄、以前はたばこの煙に関する苦情が届くこともあったのですが、2014年12月のリニューアルで喫煙所全面を強化ガラスで囲ってからは、ピタリと止まりました。喫煙される方には、こちらを利用していただければと思います。
この喫煙所から新国立競技場までの道中では、当然、路上喫煙やポイ捨てを新宿区の条例で禁止していますので、今後はこちらの周知にも力を入れていきたいです」(新宿区環境清掃部ごみ減量リサイクル課)
渋谷区は「組織委から要望があれば」
ほかには、東京体育館(開催競技:卓球)と国立代々木競技場(開催競技:ハンドボール)がある渋谷区にも話を聞いたが、喫煙所の増設については「組織委から要望があれば」とのことで、具体的な計画はないという。
一方で、有明体操競技場や有明テニスの森、東京辰巳国際水泳場など複数の競技会場を擁する江東区は、次のように回答した。
「江東区の禁煙重点地区(区主要駅周辺)では、指定時間内での路上喫煙が条例により禁止となっています。東京五輪の開催に向けた喫煙対策については今後、周知方法や喫煙所設置の可否も含め、関係する所管課と協議を進め検討していき、きれいなまちづくりに取り組んでまいります」(江東区広報広聴課報道係)
今回取材を申し込んだ区のなかでは唯一、喫煙所の増設について否定しなかったが、やはり明確なプランは立っていないらしい。
いずれの区にしても、東京五輪のために取り立てて新しい準備をするのではなく、各区における日頃の喫煙対策を今までどおり遂行していくといったスタンスのようだ。もちろん、ここから組織委が各区になんらかの働きかけをしていく可能性もある。東京五輪では、どのような方法で“完全禁煙”を成し遂げるつもりなのか、要注目だ。
(文=A4studio)