「今回は9社のうちイッティという会社が、タレントのヒロミさんを使っているわけですが、法的な問題としては消費者庁が措置命令を出して、あとは課徴金を課して終わるので、ヒロミさん自身が広告に関わっていたのでなければ、法的な問題はクリアされるでしょう。問題はこれまでにもタレントや著名人を広告塔に使って違反したケースが多々あり、そのたびにタレントや著名人の社会的責任が浮上することです。今回も法律的には詐欺などに当たるとは考えられませんが、社会的責任は十分問われると思います。
イッティの主張が事実かどうかはともかく、『ヒロミさんが開発した商品だと謳っているから買った』という人はけっこういるはずです。健康食品や健康グッズの広告で著名人を使うことはとても多いのですが、著名人が『自分で食べた』『使ってよかった』ということに対して、消費者は企業よりもその著名人を信用して商品を買うケースが多いので、そこをどう理解するかがポイントです。
ヒロミさんが広告を確認していないということになると、単に名前を貸しただけということになりますが、広告への出演料は支払われているはずです。写真や名前が載っているわけですから。そのときに、どのような表現をするのか、一切おまかせですよ、というのは考えにくいです。もしヒロミさんサイドが写真や広告文を事前に確認しないということだと、法的な問題はないとしても、社会的な責任はあるといえます」
今回、あらためてヒロミの所属事務所に取材を申し入れたが、4月4日現在でいまだに回答はない。イッティは秘密保持契約書を盾に、ヒロミ側がどこまで広告に関わったかについて、一切の回答を拒否している。前出の通販業界紙記者も「秘密保持契約を結ぶことはままありますね。タレントを守るために結ぶ契約です」と語る。
垣田氏もさらに次のように述べた。
「ヒロミさんの事務所が利用されたとするなら、利用された側として何か一言あるべきだと思います。『そういうことは一切聞いていませんでした』『確認をしなかったのは申し訳ありませんでした』くらいは言うべきだと思います。
秘密保持契約を持ち出しているので、弁護士が関わっているのかもしれませんし、内容については想像するしかないですが、ヒロミさんのことでいえるのは、スポーツジムを経営されていることです。ジム経営も景品表示法という法律に関係するので、経営者である以上、ヒロミさんはそれをご存じのはずです。そこもひとつ問題ですよね」(垣田氏)
経営するジムでトラブルも
ヒロミは現在、レギュラー出演するテレビ番組が約10本と再ブレイク中だが、芸能界に復帰するまではスポーツジム「51,5HIROMI BODY ART」を経営。2011年に大ブレイクしたカーヴィーダンスの生みの親・樫木裕実もヒロミのジムのトレーナーだった。その樫木目当てで入会した会員たちの多くが、樫木本人の指導を受けられずトラブルに発展し、その後、樫木が独立する騒ぎになったのは有名な話。ジムは現在も二子玉川と代官山で営業中だ。
ヒロミがプロデュースした「パンプマッスルビルダーTシャツ」は1枚3380円で、累計75万枚を売り上げたヒット商品。イッティが誇大広告を表示したのは昨年5月16日~8月6日まで。今後、その約3カ月間の売上の3%が課徴金として課されるとみられる。取材した業界紙の記者によれば「その間のイッティの売上は微々たるもので、返金・返品にも応じており、課徴金が課されないこともあり得る」という。果たして、ヒロミサイドからなんの説明もないまま、事態はこのまま収束してしまうのだろうか。
(文=兜森衛)