釈放された直進車の女性は「相手の車が止まってくれると思ったが急に右折したので、ハンドルを左に切ってかわそうとしたが、間に合わず衝突した」と話している。
事故というのは1つのミスでは起きにくく、2つのミスが重なって起きることが多い。通常、右直事故は8割が右折側の過失とされる。基本は直進車優先だ。しかし直進車の女性には過失はまったくないのか。
単なる直線路で対向車線の車が突然右折したわけではなく、さまざまな危険の潜む交差点で事故は起きた。道路交通法に「交差点に入る時は減速せよ」とは書かれていない。しかし、筆者は交差点に入る時はアクセルから足を離し、ブレーキの上に軽く乗せ替える。交差点には何があるかわからないからだ。100%相手が悪かろうが事故に遭いたくはない。特に右折するかもしれない車には徹底的に用心する。なぜなら筆者は普段、車よりオートバイを使うからだ。「右折されたらこっちがお陀仏」なのだ。その「恐怖心からの癖」は四輪運転でも変わらない。
今回、2台ともブレーキの形跡がなかった。もちろん一義的には右折車の過失だ。しかし、もし直進車が交差点に入る時点でアクセルを離してブレーキに足を乗せており、右折車を認識した時点でハンドルを切らずブレーキを踏み込めば、あそこまでの悲劇は防げた可能性もある。直進車は衝突後、園児たちの歩道まで約15メートルを1秒で突っ込んだという。直進車側の制限速度の60キロに近い速度で交差点に入ったらしく、アクセルを踏みっぱなしだったと思われる。
取材日は行楽日和で車が多く、愛車の大型バイク(CB1100)で実験したが、そのスピードは出せなかった。しかし、対向する側の右折ラインに車がいれば、このスピードで交差点に直進するのは筆者なら怖い。
レコーダーの解析によれば、事故を起こした右折車は、先に右折した車に漫然とついて行ったらしい。直進車からは最初の右折車が死角になったかもしれないが、それを見てもアクセルを離さなかったのなら余計に違和感を持つ。仮に法的責任はなくとも「もう少し臆病であってくれれば」と思いたくなる。
歩道には今さらのように黄色い大きな緩衝材が据えられていた。「現場にガードレールを設置すべきだった」などの声が相次いでいた。京都府亀岡市で2012年4月に通学中の小学児童らに車が突っ込み2人の児童と妊婦1人が死亡したことから、全国で危険個所にガードレールや車止めが設置された。しかし通学路に限られた。
「いつも笑顔で……『園長先生』って寄ってきてくれた……」。若松ひろみ園長が会見で机に突っ伏して号泣する姿のあまりの痛々しさに、落ち度のない同園に即日会見させたマスコミへの批判も出ているという。優衣ちゃんと雅宮君の葬儀は、遺族の希望でマスコミ取材なしで行われた。合掌。
(写真と文=粟野仁雄/ジャーナリスト)