朝鮮総連本部を落札したモンゴル企業、北朝鮮と関係か?日本と北朝鮮の密約説も
10月17日、整理回収機構の申し立てで競売にかけられていた在日朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物を、モンゴル系企業が50億1000万円で落札した。
17日付日本経済新聞によると、競売対象は土地約2390平方メートルと地上10階、地下2階建てのビル。今回が2回目の入札で、入札最低価格は1回目の入札と同じ約21億3000万円で、2件の応札があったという。
朝鮮総連中央本部の土地・建物をめぐっては、2007年6月に朝鮮総連に対する約627億円の債権が確定し、12年6月に強制売買を認める判決が確定。同年7月、整理回収機構が強制競売を申し立てて、今年3月に1回目の入札が行われた。1回目の入札では、宗教法人「最福寺」が45億1900万円で落札したものの、期限までに代金を納められなかったため、地裁の売却許可決定が失効。今月3〜10日に2回目の入札が実施された。
18日付ZAKZAK記事によると、今回の入札で落札者となったのは「Avar Limited Liability Company(アヴァール・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)」というモンゴル系の企業。登記情報によると、資本金は「1000」とだけ記されていて、業務内容は「ビジネスコンサルタント」。さらに、ウランバートル市チンゲルテイ区の住所が記されていたが、市当局者は「実在しない」と語っているという。
さらに、17日付共同通信記事は、このALLC社社長と名乗る男性に電話取材を行っている。男性は落札を事実上認めながらも、「今、(首都から離れた)セレンゲ県に出張している。電波状態が悪くこれ以上話せない」と電話を切ったという。
この落札者について、コリア・レポートの辺真一編集長は「仮に第3国の投資会社が落札したっていうことであれば、朝鮮総連、あるいは北朝鮮と、何らかの関係も想定される」と、18日放送のFNNからの取材に対し語っている。
●交差する日本政府と北朝鮮の思惑
また、日本政府と北朝鮮との間になんらかの“密約”があるのではないかと推測するのは、朝鮮半島情勢に詳しい元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏だ。菅沼氏はZAKZAK記事で、「日本とモンゴルの首脳級の往来など見る限り、日本政府の意向が動いている可能性がある。つまり、拉致問題を解決するために、総連に有利な方向で中央本部が利用されることを黙認するのではないか。不明な部分も多いが、拉致問題が進展するかもしれない」と語っている。
17日付産経ニュース記事によると、国交のある北朝鮮とモンゴルでは経済協力が進んでおり、今月末にはモンゴルの大統領が訪朝する計画もあるという。この両国の友好関係に着目した日本政府は、拉致問題解決への協力を要請するために、安倍晋三首相が今年3月にモンゴルを訪問。7月には古屋圭司拉致問題担当相も訪れている。また、拉致被害者を調べている特定失踪者問題調査会の曽田英雄常務理事は、同記事で「会館を再開発しないで、朝鮮総連と賃貸契約を結んで貸し出すという狙いもあるのではないか」との見解を述べている。
今後、東京地裁は落札者の購入資格などを調査し、適性に問題がなければ、売却許可の決定をくだす予定。ただ、産経ニュースによると、朝鮮総連はすでに東京都文京区の関連施設に空きスペースを準備しており、落札者から賃借ができなければ、中央本部の機能を移転させる準備ができているという。
落札者と北朝鮮との関わりの有無については、今後しばらく見守る必要がありそうだ。
(文=blueprint)