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なぜ玉川徹「降板」の誤報が広がった?テレ朝の思惑と、証明された玉川ファンの多さ

文=Business Journal編集部
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番組冒頭、報道フロアから視聴者に向けて謝罪する玉川徹氏

 一連の降板騒動はなんだったのか。誤報に端を発する騒動は、さらなる憶測と誤報を呼んだ挙句、軟着陸したようだ。

 安倍晋三元首相の国葬に関する事実誤認発言で、出勤停止10日間の謹慎処分が明けたテレビ朝日報道局社員の玉川徹氏が19日、レギュラー出演していた情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に出演した。番組冒頭、玉川氏は以下のように謝罪し、深く頭を下げた。

「おはようございます。今回の私の事実誤認のコメントにより、ご迷惑をおかけした電通、および菅前総理大臣に対し、あらためておわび申し上げます。このような事実に基づかない発言をテレビでしてしまったということ、それは私の慢心とおごりがあったからだと反省致しました。申し訳ございませんでした」

 玉川氏は番組から姿を消していた謹慎期間について次のように語り、再度、頭を下げた。

「謹慎の10日間、私は事実確認の大切さ、テレビで発言することの責任の重さを考え続けました。そして、事実確認こそが報道の根幹である。その原点に立ち返るべきだと考えました。

 これまで私はスタジオでさまざまなニュースに対し、コメントを続けてきましたが、これからは、現場に足を運び、取材をし、事実確認をして報告する。その基本にもう1度立ち返るべきだと考えました。そして、この結果は、この『羽鳥慎一モーニングショー』の中でお伝えする。そういうふうな考えに私は今回、至りました。この間、報道局幹部とも話し合いを続け、このような私の考えを理解してもらいました。視聴者の皆さまにも、ご理解いただけるとありがたく存じます。今後、このような形で仕事を続けて参りますが、ご支援のほどよろしくお願い致します」

突如流れ始めた玉川氏「番組降板報道」

 玉川氏は9月28日、安倍元首相の国葬に関する同番組のコーナーで、菅義偉前首相の弔辞の内容などを指摘しながら「(国葬の演出に)電通が入っている」などとコメントした。

 しかし、翌日の同番組内で「事実ではありませんでした」と発言を訂正し謝罪した。国葬の運営に電通が関与しているか否かは、総理大臣官邸など関係部署に問いあわせればわかるような内容だっただけに、SNS上では同氏や同番組、テレビ朝日への批判が噴出した。

 事態を重く見たテレビ朝日の篠塚浩社長は4日、定例社長会見で、玉川氏を10日間の出勤停止、報道局情報番組センター長ら幹部2人を「けん責処分」としたと発表し、社内には綱紀粛正を呼び掛けていた。

 しかし、玉川氏の謹慎明けが近づきつつあった13日ごろから、一部メディアが「玉川氏が同番組を降板する意向を固めたことがわかった」などと報道。テレビ朝日関係者による談話として「視聴者からの復帰待望論も寄せられていますが、復帰はしないことになった」「今回ばかりは局側もかばいきれないと判断した」などと報じていた。

著名人の進退は“誤報の宝庫”

 実際、一連の降板報道はなんだったのか。テレビ朝日報道局記者は次のように語った。

「いったい、どの“関係者”が話していたんでしょう。番組を降板するとか退社するとか、わずか2週間でさまざまな報道があって、週刊誌の記者は私より、うちの社内事情に詳しいんだな、と感心していました。(今後について)“玉川さんの肩書はコメンテーターのまま”で、“今後はちゃんと取材してから発言しますということになった”となったと、私は聞きました。

 当人が他のメディアの記者に降板もしくは、辞職する意向を直接伝えていたならわかります。もしくは“退職願か進退伺を会社に提出した”というような客観的な事実が確認されているのなら、『降板への意向を固めた』と報道することもできるでしょう。一部報道では、社内の外部有識者委員会の話なども報じられていましたが、いずれも“番組降板”や“退職”と明確に打ち出せるファクトはなかったように思われます。

 著名人の進退に関するニュースは、最終的に当事者の心持ち一つで変わり得るものです。不確かな情報が出回り、スクープの誘惑にかられるものですが、誤報の宝庫ともいうべき要注意のネタなので気をつけたいものです。

 上層部と玉川さんの間でどのようなやり取りがあったかは、社内の人間であっても推測しかできません。もしかしたら、謹慎中の10日間で“番組降板”の話題が本当に上っていたのかもしれません。

 しかし、結果的に玉川さんの事実誤認コメントで始まった騒動はさらなる事実誤認報道を呼ぶ、混沌とした状態だったということでしょうね」

玉川徹氏が羽鳥氏並みの“番組の顔”であることが証明された

 番組制作会社幹部は次のように話す。

「(番組降板報道の背景には)玉川さんの定年の件はあるのかもしれませんし、社内で玉川さんの(独特な)立ち位置や存在を快く思っていない人間もいたでしょう。モーニングショー羽鳥慎一さんの冠番組ではありますが、今や玉川さんは羽鳥さん以上に番組の顔となっています。今回の一件で、玉川さん自身のファンがたくさんいることを、あらためて証明することになりました。

 番組降板ともなれば視聴率に直結する可能性も高く、局としていろいろ知恵を絞ったのではないでしょうか。

 例えば玉川さんが番組を降板し、会社を去ることになった時、社内の内部事情を告発することを依頼するメディアも出てくるでしょう。玉川さんは番組でも自社に対して厳しい発言をよくしていましたから。

 また硬派な話題で一定の“撮れ高”が期待できる人物は、いそうでいません。もし今回の一件で玉川さんが番組を降板し、退社していたら、YouTubeなどの動画関連コンテンツ制作関連ビジネスや、オンラインサロンビジネスなどを展開している大手事業者から、必ず声がかかったと思います。そうしたフィールドで、『元テレビ朝日社員』の肩書で、これまで以上に歯に衣着せぬ発言をしていくのが、局として望ましい未来かといえばそうではないでしょう」

 報道の最前線に立つことになる玉川氏。これからは総理大臣官邸の記者会見などで、自ら手を上げ、岸田文雄総理などに詰め寄る姿を見ることができるのだろうか。

(文=Business Journal編集部)

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