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また数カ月も隠蔽…井岡一翔が2度目の大麻陽性、JBCの不可解な動きと警視庁の影

文=Business Journal編集部、協力=上昌広/血液内科医、医療ガバナンス研究所理事長
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井岡一翔のInstagramアカウントより

 ボクシングの元WBO世界スーパーフライ級王者、井岡一翔が、昨年12月に行われたWBA同級王者ジョシュア・フランコ(米国)とのWBA・WBO世界スーパーフライ級王座統一戦に際し受けたドーピング検査の検体から、大麻成分「THC」の代謝物が検出されていたと日本ボクシングコミッション(JBC)は発表した。井岡は今月24日にフランコとの再戦を控えており、その直前の21日深夜というタイミングでJBCが発表したことに対し、井岡が所属する志成ジムは

「その直前にこのような発表がなされることについては、当ジムとして、非常に困惑しているとともに、疑義を有さざるを得ません」

と疑義を唱えている。井岡といえば20年に行われた田中恒成戦でもドーピング検査で大麻成分が検出されており、このときはJBC側が不適切な検体管理などを理由に井岡サイドへ謝罪し幕引きとなっていたが、なぜ井岡に2度目の「クロ判定」が出たのか、そして、なぜJBCは前回同様に検査結果を数カ月間におよび本人に通知せず事実を伏せ、今のタイミングで公表したのだろうか――。

 まず、改めて前回の騒動をおさらいしておこう。20年12月に行われたWBO世界スーパーフライ級王者決定戦で井岡は田中に8R・TKOで勝利したが、試合前に井岡から採取された2つの尿検体のうちA検体について、翌年1月7日にJBCがドーピング検査を実施したところ、大麻が検出された。さらに同月19日には覚せい剤または合成麻薬の摂取が疑われる物質が検出された。本来、こうした場合はJBC理事長が倫理委員会を招集し、審議の結果を選手に通知する取り決めになっているが、同委員会は開かれず、また井岡側にも連絡がなされなかった。

 同年3月には、警視庁が覚醒剤取締法違反容疑で、JBCの検査機関に冷凍保存されていた井岡のB検体を押収。その後、警視庁はJBCに本件の捜査打ち切りを連絡したが、JBCが再検査用のB検体を警視庁に渡してしまったため、JBCによる検証ができないという事態に陥った。そして同年5月に週刊誌報道などで一連の事態が公になると、JBCは倫理委員会を招集し、同委員会はJBCの検査や手続きのプロセスに問題があったと指摘する答申を出し、JBCは井岡を処分しないことを決定。さらに井岡サイドへ謝罪し、幕引きとなった。

 それから2年が経過し、再び同じような事態が発生。JBCは今月21日深夜、昨年のフランコ戦の前に井岡から採取した検体から、禁止物質であるTHCの代謝物であるTHC-COOHが検出されたと発表。ただ、世界アンチドーピング機構(WADA)が定める上限の基準値(180ng/ml)よりも少ない量であるため、「ドーピング禁止を定めるJBC第97条には違反しなかったものと判断」したとする一方、「井岡選手の第97条違反以外の当法人の各種規程の違反を理由とする処分の可能性については、当法人で検討中です」と発表。なんらかの処分を下す可能性に含みを持たせている。

JBCの不自然な対応の背景

 不可解なのは、陽性との検査結果が出たのは1月4日であるにもかかわらず、井岡サイドに通知されたのは4カ月もたった5月26日である点だ。前回もJBCはドーピング検査で陽性反応が出たことを井岡サイドに通知しなかったが、なぜJBCは適切なプロセスで対処しないという過ちを再び繰り返しているのか。

「JBCルールでは体に入れ墨などを入れている選手の出場を禁じているが、井岡は2020年の田中恒成戦であえて腕などにタトゥーを入れて出場。結局、JBCは井岡に対し厳重注意処分を下したが、両者間の確執が浮き彫りとなった。そうしたなかでJBCが井岡のドーピング検査で陽性反応が出たと発表すれば、当然ながら井岡側は異を唱えてくるし、『JBCによる嫌がらせ』という見方も出る。世間で騒がれることを恐れたJBCが『臭いものに蓋をした』という見方もあったし、JBC側に検体を万全な状態で管理できていたという自信がなかったのかもしれない。いずれにしても、井岡サイドはJBCではなく警視庁からの照会を受けて初めて検査で陽性だった事実を知り、当人への連絡抜きでいきなり頭越しに警視庁とやりとりをしていることに不信感を抱いた。

 今回、JBCが井岡に検査で陽性だったと通知したのは検査から4カ月以上が経過した先月のことだが、面倒な事態を避けるために見て見ぬふりをしていたところに、情報をつかんだマスコミから問い合わせを受け、慌てて公表したというのが実態では。場当たり的な対応が裏目に出て、フランコ戦の直前という最悪のタイミングでの公表となり、かえって騒動に油を注ぐ格好となった。JBCは日本のプロボクシング界を束ねる一般財団法人であり、公的な組織ともいえ、公式試合をめぐり生じた重大な事実は速やかに公表すべき。隠蔽との誹りは免れない」(スポーツ紙記者)

 また警視庁OBはいう。

「気になるのは、井岡サイドが前回の騒動の際に『セルフケアに使用していたCBDオイルの成分が検出されたのかもしれない』と説明していた点。ドーピング検査で引っかかる懸念があるにもかかわらず、なぜ大麻成分が含まれているCBDオイルを使用していたのか。説明には腑に落ちない部分がある。違法薬物がらみの犯罪は所持の現行犯でしか逮捕することはできず、使用罪だけで容疑者をしょっ引くことはできない。あくまで仮定の話として、もし仮に井岡がクロだとしても、情報が公になった以上、ブツは隠滅などされて出てこない可能性が高く、警視庁がすぐになんらかの動きを見せるということはない。ただ、2度も同じ疑いが浮上しているだけに、警視庁がマークし続けていることだけは確かだろう。

 一方のJBC側も、前回の不祥事を経て検査や検体管理をより厳重に行っており、公式に井岡の検査結果が陽性だったと発表したというのは、それだけ検査結果に自信があるということ。2度目の陽性反応ということでJBCが警視庁に相談し、それを受けて警視庁が内偵を進めたものの証拠をつかめず、結果的にJBCによる発表がこのタイミングにずれ込んだ可能性も否定できない。一見すると不自然とも映るJBCの動きからは、背後で警視庁と連携を取り合っている気配も感じられる」

大麻検査で擬陽性が生じることは医学的な公知

 前述のとおり井岡の所属ジムはJBCの発表を受け22日、

「井岡は、2022年12月31日の試合前において、THC-COOH成分が検出されるような大麻等の禁止物質を摂取も使用もしておりません。2年前に偽陽性とはいえ陽性と一度は判断されたこともあり、当ジムも井岡も、禁止物質の摂取については、常に注意を払っておりました。当ジムおよび井岡としては、今回も、井岡の潔白を証明していく所存です」

との声明を発表。気になるのは、大麻を使用していない場合でもーピング検査で陽性反応が出ることはあるのかという点だが、血液内科医で元東京大学医科学研究所特任教授の特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏はいう。

「大麻検査で擬陽性が生じることは、医学的な公知である。特に有名なのは、HIV治療薬エファビレンツ(商品名ストックリン、製造会社MSD)服用者で起こることは広く知られている。擬陽性を起こすのは、エファビレンツに限らない。権威ある『MSDマニュアル プロフェッショナル版』という医師向けのサイトには、『イブプロフェンはマリファナの検査で偽陽性の原因となることがある』と記されている。イブプロフェンは、日本でも汎用されている鎮痛剤だ。この薬を服用している人が、ときに擬陽性を呈する。

 おそらく、これらの薬物は氷山の一角だろう。このような場合、別の種類の検査を併用し、両方とも陽性になることを確認する場合が多い。JBCも、そのような対応をとっているはずだ。程なく、結果が発表されるであろう」

 スポーツ紙記者はいう。

「タトゥー問題しかり、少なくともJBCは井岡サイドのことをよくは思っていない。少しでも疑わしい点が見つかれば、容赦なく厳しい処分を下すだろう」

 今後の展開が気になるところである。

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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