通常のマンションは、管理組合が管理会社と契約しているが、アスタくにづかは管理者が管理会社を兼務し、実質の管理業務をまちづくり社の筆頭株主であるイオンディライトに丸投げし、さらにイオンディライトも下請け業者に丸投げしているという。
国土交通省は管理者方式の採用に当たっては、管理者が自らの関連会社に管理を専属的に任せる場合、是正を指導している。まちづくり社は自らの最大出資元に管理を丸投げしており、民法上の利益相反行為に該当する疑いもある。
●規約改正すらできない状況
このような状況を危惧する入居者たちは、アスタくにづかの各棟の管理組合総会において、まちづくり社を管理者から解任すること、および管理会社の変更を求める議案を提出した。しかし、結果は否決となった。保留床の68.7%の議決権を持つ神戸市が反対したためだ。
ここまで見てきたように、規約で管理者をまちづくり社とすることが定められており、規約を改正するしかないのであるが、神戸市が多くの議決権を持っているため、規約の改正すらできない事態が続いている。
神戸市とまちづくり社の協定書では、「甲(神戸市)は区分所有者の権限を乙(まちづくり社)に委任する」となっており、神戸市は所有しているアスタくにづかの約6割の店舗をサブリースする業務と併せ、議決権もまちづくり社に委任している。
これは一般の区分所有者の意思が反映されにくく、管理者であるまちづくり社の独断専行がまかり通る仕組みといえる。
このような状況に至って、ようやく神戸市も事態収拾に動き出そうとしている。デベロッパーが店舗床を買い取ることを視野に入れた再編計画を、14年度中に策定予定だという。14年度当初予算案で、コンサルタント費用など2337億円を計上した。商店主たちにとっては、もはや限界のところまできており、神戸市は早急な対策が求められている。
阪神淡路大震災の発生から19年が経過したが、いまだに被災地・神戸は復興のまっただ中にある。
(文=山口安平)