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“政権の広報機関”NHKが歪める世論 番組内容の国会議員への事前説明は「通常業務」

文=服部孝章/立教大学社会学部教授
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 同調査は、各メディアのデモ報道を次のように分析している。

・読売新聞:原発推進の立場をとっているため、事実報道に徹している。
朝日新聞:デモと政治をつなぐ回路、いわゆる“直接的手段”を重視。しかし、具体的行動は示唆せず、鳥瞰的報道が目立つ。またデモに実効性がないことを暗に認めている。
・東京新聞:市民の目線に立ってデモを報道。市民の不満を吸収し代弁する場としてデモを評価し、その社会的地位向上に努めている
・TBS:ニュース番組『NEWS23X』は、新しいデモの形とそれによる影響を伝えているが、その後は事実報道に徹している。
・テレビ朝日:同『報道ステーション』は、脱原発デモと政府の動きを重ね合わせて報道することが多く、市民側と政府側とのバランスをとった放送である。
NHK:同『ニュースウオッチ9』は、デモに関する報道が少なく、脱原発デモの報道に前向きでない。

 以上の分析から、同調査は「結果として、民主党政権に『原発ゼロ』を掲げさせた」としながも、「デモを民主主義社会における直接的政治参加の手段として扱ったのは東京新聞のみ。よってデモに対するマイナスイメージが払拭されないのは、報道の質的側面の問題がある」と結論づけた。分析対象の調査期間は、新聞が11年3月から12年年末まで、テレビは12年7月16日からほぼ1カ月間。不十分な調査分析であるものの、同調査の指摘は間違っていないと思われる。

●NHK経営委員会に問われる役割

 最近NHKでは、籾井勝人会長や一部経営委員の発言をめぐり問題が指摘されることが多いが、05年の政治介入問題同様、うやむやのままで済まされている。04年9月30日に制定され、その後幾度か改正されている「NHK倫理・行動憲章」には、次のように明記されている。

「NHKの全役職員は、本憲章を順守し、その徹底を図ります。会長・役員および各組織の長は、本憲章に反する事態が発生したときは、迅速に調査と原因究明にあたり、再発防止に努めるとともに、社会への説明責任を果たします」

 しかし、今年2月、自身の発言が問題視され連日国会の委員会に出席を求められた籾井会長からは、明確な説明がなされることはなかった。さらに安倍首相の政治姿勢のコピーを繰り返す姿に、受信料を支払う国民の不満がいつか爆発する可能性もある。それは、受信料で成り立つ事業者の将来に暗い影を落とすことになるだろう。

 NHK経営委員会の役割は近年ますます大きくなっているが、会長の問題発言等を指摘するだけでなく、任免権を持つ組織として独立した判断を社会に示すことが、今こそ求められている。
(文=服部孝章/立教大学社会学部教授)

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