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就活後ろ倒し骨抜きか インターンシップとリクルーターによる“青田買い”急増の実態

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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●リクルーター制も活発化

 そこでOB・OGが学生と個別に接触するリクルーター制を導入する企業が増えると見られている。住宅関連企業の人事課長は「来年8月の選考開始まで、どれだけ多くの学生と接触するかが勝負になる。当社はリクルーター制を取り入れていなかったが、導入を検討している最中だ」と語る。リクルーター制とは、入社年次の若い社員が、学生を説得するための研修を受講後、人事部の手足となって母校の社員と接触するというもので、採用活動の一種である。

「人事部によるリクルーターへの研修では、『仕事は大変だが給与はいいよ』『かわいい女性が多い』というアピールポイントなど、学生に『入社したい』と思わせるためのノウハウが伝えられる。インターンシップで優秀と見なされた学生に対しては『人事部に紹介されて』と言って接触する。あるいはゼミや研究室、サークルを訪問し、めぼしい学生にアタックする。リクルーター1人に10人程度の入社志望者獲得をノルマにしている企業もあり、学生の情報は人事に逐一報告される」(建設業人事課長)

 さらに、タイミングを見てリクルーターが学生に「うちに来る気があれば、人事部もあなたを欲しいと言っている」という“半内々定”を出す場合もある。これも学生をつなぎとめるための方法だが、「あくまでもリクルーターが言ったことにして、人事部が言質を与えることはしないようにリスクを回避することが重要」(同)と語る。

 しかし、インターンシップの受け入れやリクルーター制を導入できる企業は限られる。お金や人員をかけられる大手企業ほど有利になり、中堅・中小企業はそこまでの余裕はない。

 中堅IT企業の人事部長は「有名企業はインターンシップやリクルーターを通じて学生をつなぎとめて、選考解禁日の8月1日にはほとんど大勢が決まっているのではないか。大手の選考が一段落するのに年末までかかり、年明けの決算期ごろにようやく中小企業の採用が決まるか、予定数を確保できない恐れもある」と嘆く。

 売り手市場の中で学生の大企業志向も強まっているが、結局、今回の採用選考の後ろ倒しで得をするのは大手企業と一部の有名大学の学生だけということになりかねない。

●就活戦線、早くも長期化の様相

 採用選考活動の早期化に対しては、もともと大学関係者から「学業を阻害する」という批判があった。安倍政権も学業に専念する時間の確保や海外留学がしやすい環境整備の観点から早期化自粛を成長戦略(日本再興戦略)に盛り込んでいる。

 ところが同じ成長戦略の中には就職ミスマッチを改善するために「インターンシップの活用の重要性等を周知し、その推進を図る」と明記している。もちろん、入社後の離職率を少なくするための就業体験の必要性を指摘したものだが、企業にとってはせっかく学生と接触できる機会であり、採用につなげたいという思いがある。

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