群大病院では、2010年12月から14年6月までに、8人が腹腔鏡での肝臓切除手術後に死亡している。被害者弁護団の依頼を受け、術中のビデオを検証した都内の内視鏡認定医は「血の海の中で手術をしているような状態だ。腹腔鏡の技量については、かなり悪いといえる」と厳しく指摘した。
この8例はすべて、同院第2外科に所属していた40代の男性助教(3月末に退職)によって執刀された。病院側は、手術前に必要な検査をしていなかったり、患者の家族に対する説明を怠っていたなどとして、8例すべてについて「過失があった」と認めている。
さらに、腹腔鏡手術での死亡例を検証する中で、開腹手術でも10人が死亡していることが明らかになった。そのうち1例では、「がんがある」として手術をしたにもかかわらず、術後の検査でがんではなかったことが判明、患者は術後3日目に死亡した。病院側はその後、遺族にがんではなかった事実を説明せず、死亡後の書類にも「がんだった」と虚偽の記載をしていた。
この医療事故について、一部週刊誌では『「殺しのライセンス」を持つ男』とセンセーショナルな見出しが躍ったが、それも決して過言ではないような所業が次々と明るみに出ているのだ。
千葉県がんセンターでも、08年6月から14年2月に行われた腹腔鏡手術で11人が死亡した。外部委員による検証委員会では、そのうち10例でなんらかの過失があったと認定されている。8例を担当した医師は、腹腔鏡手術の第一人者として、全国的に名の知られた存在だった。しかし、やはり「腹腔鏡を片手で操作するなど、危険性が危惧される手技がある」と指摘されている。1例を担当した医師については、「(技量が)安全に手術を実施できる水準に至っていない」と判断されており、遺族としてはたまったものではないだろう。
内視鏡を使用する外科手術は、1980年代後半から始まった。患者の体に数センチの穴を開け、そこから内視鏡や専用のレーザーメスなどを体内に入れ、検査や手術を行うのが一般的だ。手術とはいえ、切り開く部位が小さくて済むため、患者の負担は少なく、回復も早い。そのため近年、増加傾向にある。また、内視鏡は、日本の精密機器メーカー・オリンパスが世界シェアの約70%を占めていることでも知られている。