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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

女性殺到の駅ナカ「コンビニクリニック」に勤務して驚愕した受診理由…日本医療の問題露呈

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長
女性殺到の駅ナカ「コンビニクリニック」に勤務して驚愕した受診理由…日本医療の問題露呈の画像1写真1:久住英二医師

 私がナビタスクリニック新宿で診療を始めて2年が経過した。ナビタスクリニックとは、駅ナカのコンビニクリニックである。2008年に久住英二医師らを中心に立川駅ナカに立ち上げた(写真1)。その後、川崎駅と新宿駅にもクリニックを開設した。久住医師はインフルエンザや麻疹、風疹が流行すると、コメンテーターとしてしばしばテレビに登場するので、ご存じの方も多いだろう。

 彼は新潟大学を卒業した血液内科医で、虎の門病院などで勤務した後、コンビニクリニックという新しい形態を立ち上げた。当時、世間では「医療機関のコンビニ受診は怪しからん。医師が疲弊するのでできるだけ避けるように」という論調が強かった。世間の常識の逆を張ったことになる。

 ナビタスクリニックでの診療を経験し、私は改めて医療の多様性を実感する。ナビタスクリックの受診患者の大半は20~30代で(図1)、7割が女性だ。18時以降に患者が急増し(図2)、患者数がもっとも多いのは月曜日だ(図3)。土日は会社が休みなので、月曜日に集中する。大半の患者が仕事帰りに受診していることがわかる。従来型の病院やクリニックでは、このようなニーズに対応できなかった。

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 では、彼女たちの受診理由はなんだろうか。4月現在、もっとも多いのは風邪だ。次いで花粉症である。ここまでは普通のクリニックと変わらない。ナビタスクリニックがユニークなのは、3番目以降の受診理由だ。ワクチン、貧血、ピル、さらにモーニングアフターピル(緊急避妊ピル)、性感染症で受診する患者も多い。

 注目すべきは、いずれも20~30代の女性が抱える悩みであることだ。ところが、医療界は、このようなニーズに十分に対応してきたとはいいがたい。ワクチンは感染症内科、貧血は血液内科、ピルやモーニングアフターピルは婦人科、性感染症は泌尿器科の担当だ。残念なことに、いずれの診療科でも中核領域ではない。筆者の専門とする血液内科の場合、中心は白血病や悪性リンパ腫の診療で、貧血の専門家はほとんどいない。

 このような診療領域以上に、ナビタスクリニックを受診する患者が求めるのは、アンチエイジングだ。ところが、この分野に精通した医師は少ない。縦割りの専門医育成システムが患者の利便性を損ねてきたといっていい。

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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