その火災保険が、今年10月から変わることをご存じでしょうか。タイムリミットまで、あと3カ月弱。この期間を有効に使って、ぜひ火災保険の見直しをしてみましょう。
まず、なぜ火災保険が必要かということからご説明します。
自分の不注意で火事を起こしてしまい、自分の家が燃えた場合の再建費用は、当然自分持ちです。その際、火災保険に入っていれば保険金で建て直すことができますが、入っていなければ貯蓄を取り崩すか、新たにローンを組んで建て直すことになります。
では、もし隣家の不注意で火事が起こり、自分の家が延焼した場合にはどうなるでしょうか。隣家に対して、「弁償してほしい」「建て替えてほしい」といった請求をすると考えている人もいるかもしれません。しかし、実は「失火の責任に関する法律」には、「不注意で他人の家を燃やしてしまったとしても、賠償はしなくてよい」という趣旨が書かれています。
つまり、隣家からのもらい火で自分の家が燃えたとしても、原則として、修理や建て直しは自費で行わなければならないのです。そんな時のためにも、火災保険が必要なのです。裏を返せば、もしあなたが不注意によって近隣の家を燃やしてしまったとしても賠償責任はありません。ただし、「てんぷら鍋を火にかけたまま放置して出火させた」といった重大過失や故意の場合は、賠償しなければなりません。
さて、そんな火災保険が、どのように変わるのでしょうか。
今は保険料を一括払いすると、最長36年間の火災保険に加入することができます。そして、一括払いすると保険料が割引になり、実質約26年分の保険料で36年間の保険に加入することができるのです。つまり、約10年分が無料となるオトクな支払い方法です。
しかし、10月から火災保険は最長10年に短縮されます。その10年分の保険料を一括払いして安くなる保険料は、約1年分です。
近年、水災や竜巻など災害が増えています。そのため、保険会社も約26年分の保険料で36年の補償をすることが難しくなり、このような措置になったのです。そう考えると、最長36年契約の一括加入で約10年分も安くなる現在の制度のありがたみがよくわかります。
現在、1年更新や5年更新、あるいは年払いなどで保険料を支払っている人は、オトクな火災保険に加入するチャンスです。また、現在火災保険に加入していても、残り期間が少ない場合は、今のタイミングで火災保険を見直すのもいいでしょう。
火災保険は、一旦支払った保険を途中で解約する場合でも、基本的には経過した期間分と手数料相当分が差し引かれて、未経過期間の保険料は返金してくれます。そのため、生命保険よりも見直しがしやすいのです。
最長36年一括加入の期限は、9月末までとなっています(詳細は各保険会社に確認してください)。それまでに十分検討して、オトクに火災保険を活用してください。約10年分の保険料を浮かせられる最後のチャンスです。
(文=前野彩/ファイナンシャルプランナー)