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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」~“家庭内地面師”!?

姉に騙され両親の遺産を“全部持っていかれた”!「ウチの親族は揉めない」が悲劇を招く!

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表、一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表

 Yは「ZにB男の遺産を渡さない方法がある。不動産をすべて私の所有にし、その後、Xに分ければいいから」と切り出した。A子は法律のことはまったくわからないものの、Yひとりの所有にして、その後、本当にXに不動産持分を譲渡してくれるのか、一抹の不安を抱いた。しかし「Yは法学部出身なので、色々と知っているのだろう。Yは私には懐いてくれなかったが、さすがに一緒に育ったXにはきちんとしてくれるはず」と思い直すことにしたのだ。

 Yの提案は、「遺産分割協議書にA子とXが捺印して、不動産のB男の持分をすべてYに相続させること、不動産のA子持分は売買契約書を交わし、YがA子から買い取る」「すぐにXに対し、不動産の共有持分2分の1を譲渡するから、Yは特に金銭を支払うことはしない」というものであった。

 2年後、B男の後を追うように、A子が亡くなった。葬儀後一段落して、空き家になっていた実家を訪ねたX氏は、Yがなんの相談もすることなく、実家の不動産を第三者に売却し、行方不明となっていたことを知った。

 驚くのはこれだけではなかった。YはB男の養女だったが、A子とYは養子縁組をしていなかったことを知った。養子縁組をしていないということは、A子の相続人はXとZとなる。Xは完全にYに図られたのだ。

代償分割制度

 井上裕貴弁護士(みとしろ法律事務所)は、次のように解説する。

「B男の相続人は、A子、X及びYの3名なので、B男が死亡したことにより、自宅不動産は、A子が持分4分の3、XとYが各持分8分の1の共有となっていたはずです。そもそも、遺産分割の方法として、さまざまな方法を採り得るのですから、本件ではA子とXは、Yの提案に乗る必要はまったくありませんでした。

 仮に、B男の遺産分割がなされないうちにA子が死亡していたときには、自宅不動産の共有持分は、最終的にXが2分の1、Yが8分の1、Zが8分の3となっていたはずです。Yは、自宅不動産の売却代金を騙し取る目的で、上記のような提案をしたのかもしれませんが、遺産分割協議の無効取消を主張したり、不法行為責任を追及したりしたいところですが、Yが行方不明となっているのでは、難しいかもしれません」

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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