30代独身女性、老後の不安から“割高な”新築マンションを買い陥った絶望的悲劇
株(の現物)で500万円の損をするのは、実は簡単じゃない。元手がないと損にならないからだ。1000万円で株式を買い、買った銘柄が半分まで下がったら500万円の損だ。
でも不動産は、価格2000万円、実際の価値1500万円の物件を、最近の不動産投資会社が勧める方法で買うと、損に全く気づかない。その方法とは、頭金ゼロ、諸費用分だけ、たとえば50万円の現金を払い込む方法だ。実は買った時にはもう550万円の損が出ていることになる。売却の費用を考えると600万円以上だ。でも、すぐには気づかない。
気づくのは、期待していた家賃が入らなくなった時、事情が変わって売りに出した時だ。そのときには、損は600万円からトータルで800万円、1000万円に膨らんでいるかもしれない。
不動産投資は、これほど大きなリスクを持っている。ところが、相談に来た人に話を聞くと、不動産投資会社は、投資の魅力、メリットだけを強調し、投資のリスクをほとんど話していない。営業マンは、研修を受けた通りに顧客に勧めており、不動産業界での経験が浅い本人も投資リスクを理解していないケースが多い。不動産投資は魅力的と信じ込んでいる。設立からまだ10年も経っていない投資会社も多い。不動産の値上がりマーケットしか経験したことがない人たちが、リスクを認識せずに強気で売っている。
投資のリスクを十分に説明しない会社からは絶対に買わない
不動産投資に限ったことではなく、すべての投資に共通する大切なことをお話ししよう。
投資をするときに一番大切なのは、どんなリスクがあるか、そのリスクによって、最悪どれくらいの損をすることになるかを、しっかり知ることだ。信頼できる会社、営業職員、アドバイザーは、そのリスクを十分に、何度も、確認して教えてくれる。もし、投資セミナーや営業トークで「リスクはほとんどありませんよ」という言葉を聞いたら、すぐに会場を出たほうがいい。その営業マンとは縁を切ろう。
不動産投資ってどんなものだろう、と興味本位でセミナーに足を運んだ1カ月後には不動産を買っていた、という人も少なくない。セミナーに参加するときは、個人情報を提供しないかたちが望ましい。
次回は、不動産投資会社がどのような不動産を、どのように売っていて、どのようなリスクがあるか、その悪い例をお話ししよう。
「不動産投資を始めてみたい」と考えているあなた。決して、焦ったり急いだりしないこと。自分の動機が、老後の不安からではないかを確認しよう。不動産投資は数カ月、数年待っても、遅すぎることはない。逆に、学ばずに投資して良いことはない。最初にまぐれで利益が出ても、続けるうちに大損になることが多い。
投資を始めたいと思ったら、まず自分の動機に向き合おう。決して不安から投資を始めてはいけない。
(文=中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー)
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