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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

巨大ビルが危ない!賃貸市場活況の「真実」…壮絶なテナント奪い合い、中小ビルのスラム化も

文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役

 現に、オフィスビルマーケットでは、水面下で大手デベロッパーによる新規供給予定ビルへのテナント誘致合戦が過熱しています。たとえば、三井不動産が運営する六本木の東京ミッドタウンのアンカーテナントであるヤフーは、赤坂見附に来年誕生する東京ガーデンテラスに移転することが決まっています。

日本は「ファーイースト」

 20年の東京五輪開催時までに多くのグローバル企業が東京に集まってくることは想定できるのでしょうか。大手町、丸の内、日本橋、品川、渋谷、新宿、多くの再開発事業で、東京の「グローバル化」がテーマとなり、国際金融センターの設立構想がぶち上げられています。

 しかし現在、アジアにおける国際金融センターは日本国内には存在しません。アジアエリアの国際金融センターの地位は、最近では完全にシンガポールになっています。アジア発展の中心は日本だと考えるのは、日本人の一部だけです。多くの外資系企業のアジア本部もシンガポールに立地しているのが現状です。アジア経済圏はこれからもシンガポールを軸に中国、台湾、香港からASEAN諸国にまたがるエリアを中心に、大いなる発展が見込まれます。

 このなかで日本の地位は経済規模では相変わらず世界第3位としての影響力は変わらぬものの、地政学的には世界の中での「極東」であるのと同じく、日本はアジアにおける「極東=ファーイースト」なのです。なぜならシンガポールから主要なアジア都市には4時間以内でアクセスが可能ですが、シンガポールと東京は飛行機で7時間半という「離れ小島」なのです。仮に国際金融センターの地位が確立できたとしても、各デベロッパーの夢をすべてかなえるために東京に3つも4つも建設することはあまりに現実離れしているといわざるを得ません。

 結果として、国内需要が大きく改善しないかぎり、これから大量に完成する「航空母艦」クラスのビルの甲板を埋めるテナントは、既存のオフィスビルから「狩って」こざるを得なくなる可能性が高いのです。

オフィスビルの羅列

 昨年、東京都港区虎ノ門エリアで、環状2号線の新橋―虎ノ門間が開通して話題になりました。東京都はこの新橋と虎ノ門を貫通するこの通りを「シャンゼリゼ通り」として潤いのある街づくりを行っていくことを標榜しています。このエリアの完成イメージについては港区のホームページなどでも垣間見ることができますが、イメージパースを見る限りでは、「シャンゼリゼ」というよりも、都内にもうひとつ「大手町」をつくるかのような大型オフィスビルの「羅列」に終わっています。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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