巨大ビルが危ない!賃貸市場活況の「真実」…壮絶なテナント奪い合い、中小ビルのスラム化も
賃貸オフィスマーケットが好調です。三鬼商事の発表によれば、10月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は4.46%。前年同月比で1.14%の改善。2年前と比較すると3%程度も改善しています。平均賃料も空室率改善のわりに上昇しないといわれつつも、穏やかに回復。10月時点で月坪あたり1万7,612円と前年同月比で699円の上昇となっています。
需給バランスの改善と、東京のオフィス賃料が国際水準で「割安」という印象を背景にオフィスビルに対する投資意欲も高まり、現在都心の大型オフィスビル売買マーケットにおける投資利回り(Cap Rate)は4%前後まで低下し、オフィスマーケットは総じて活況といわれています。
東京五輪の開催を見据えて現在、都心部では大規模ビルを中心に新規開発案件が目白押しです。特に大手町や日本橋といった古くからのオフィスビル街では老朽化したビルを取り壊し、容積率の割り増し制度を活用して、ワンフロアの貸付面積が1000坪を超える「航空母艦」のようなオフィスビルが続々と建設されています。
森ビルによれば、今年から17年の3年間で東京都内では延床面積1万平方メートル以上の大規模オフィスが約330万平方メートル(約100万坪)も供給されるとのことです。この水準はちょうど平成バブルといわれた1990年代初期の頃の供給水準とほぼ同じになります。
特徴的なのは平成バブル時代の数値は、年平均40棟程度で100万平方メートルの供給だったものが今後は17棟で同じ面積、つまり1棟当たりの規模が超大型化していることです。オフィスビルはますます大型に、そして耐震、省エネ、環境対応、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対応など満艦飾の「安心・安全・快適」性能を具備したものに生まれ変わってくるのです。
こうした大型の再開発は大手町や丸の内では三菱地所、六本木では森ビル、日本橋、日比谷では三井不動産、渋谷は東急電鉄、東急不動産、新宿は住友不動産といった大手デベロッパーを中心に20年の東京五輪開催前後に続々と竣工を迎えることになります。
日本経済はアベノミクス効果を享受しながら順調に回復、オフィスビルマーケットはますますグローバル化し、世界中の企業が日本の首都東京に集まることで当面は安泰という見方が広まっています。
ところが、こうした予測は果たして正しいのでしょうか。