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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

「老後への不安」の答え…結局、何歳分までをいくら蓄えておけばよいのか

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表

 しかし、この答えは実をいうと、とても簡単なのです。なぜなら公的年金は死ぬまでもらえるからです。もちろん公的年金だけでは生活を楽しむのに不十分というのはわかります。公的年金だけで旅行に行ったり外食したり、好きなことをするというのは難しいでしょう。ですから、企業年金や退職金、あるいは自分の蓄えで老後に備える必要が出てくるわけです。

 私は自分でもそう思っていますし、人にアドバイスする時もそういってますが、老後資金を自分で準備する金額は、平均寿命よりも少し余分に長生きするくらいの期間で考えておけば十分だと考えています。今、日本の60歳時点での平均余命を見ると、男性が83.55歳、女性が88.83歳です。だとすれば、90歳くらいまで生きると考えればいいでしょう。もしそれよりも長生きした場合は、公的年金が死ぬまで支給されますからその範囲内で生活すればいいのです。

 人間というものは齢をとるとともに体力も衰えますから、60代や70代の頃のように活発に活動するのは難しいでしょう。だとすれば公的年金だけでも十分生活していくことは可能です。つまり持っているお金は90歳までに全部使い切ってしまいましょうということです。要は割り切ってしまえばよいのです。それ以降長生きできれば、あとは本でも読みながらのんびりと暮らせばよいと私は考えています。

死ぬことはリスクではない

 私は「死ぬことはリスクではない」と思っています。なぜなら人間は死ぬことが確実だからです。リスクというのは、「不確実なこと」という意味ですから、人間は誰でも100%死ぬのであれば、死ぬこと自体はリスクではありません。いつ死ぬかわからないことがリスクなのです。だから公的年金は“長生きする”というリスクに対応するために死ぬまで支給されるのです。

 現在、男性の平均寿命は80歳を超えていますが、健康寿命は71歳ぐらいです。前述したように遊びに行ったり、旅行したりと活発に動けるのは70代前半ぐらいまでと考えておいたほうがよいでしょう。それ以降はおそらくそれほど活発に動くことはできない可能性が高いからです。もちろん、なかには三浦雄一郎さんみたいに80歳でエベレストに登頂するという人もいるでしょう。それはそれで結構なことで、おそらくそういう元気な人は70歳を過ぎても働き続ける気力と体力があるでしょうから、あまり生活不安もないと思います。

 私自身もいつまで生きられるかわかりませんが、90歳までは元気で活動していて生活が楽しめるぐらいの経済的ゆとりを持てるようにというつもりで、64歳になる今も元気で働き続け、貯蓄や投資を心がけるようにしています。
(文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表)

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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